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つくばセンタービルco-en
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つくばセンタービルco-en

茨城県
つくば市
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つくばセンタービル1階の旧飲食店街跡地を再生した交流・共創拠点「co-en」。コワーキングからシェアキッチン、アートウォール、チャレンジワゴンまで6つの機能で多様な活動を受け止め、市内研究機関と連携した科学イベントを日常的に走らせることで、「つくって終わり」になりがちな公共空間を使われ続ける場へと運営しているまちづくり会社主導の事例。

つくばセンタービルco-en

概要

co-en(コ・エン)は、つくばセンタービル1階の旧レストラン街「アイアイモール」跡地、延床約2,000平方メートルを改修して2022年5月7日に開業した交流・共創拠点である。コワーキング(co-working)、貸しオフィス(co-office)、イベントスペース(co-event)、シェアキッチンとカフェ&バー(co-cooking)、アートウォール(co-wall)、チャレンジワゴン(co-wagon)という6つの機能を一つのフロアに束ね、起業家・クリエイター・市民・親子・研究者など多様な人が「働く・出会う・試す」ための器として設計された。運営は、つくば市が筆頭株主のまちづくり会社「つくばまちなかデザイン株式会社」が担う。 (参考:6つの機能で働く人を応援する「co-en」 つくばセンタービルに開業 - NEWSつくばco-en 公式サイト

名称は、共同を意味する「Co-」と、人と人の縁・共創を支えたいという願いを込めた「en(縁)」を組み合わせたもので、日本語で読めば「こうえん=公園」となり、誰もが気軽に立ち寄れる場という意味も重ねている。co-enは、つくば駅周辺の再生をめざす「つくば中心市街地まちづくり戦略」のリーディングプロジェクトの中核施設にあたり、戦略全体や運営会社の経営課題は関連事例(C9)で扱う。本稿は、その器をどう「使われ続ける場」として運営しているかという、拠点運営の中身に焦点をあてる。 (参考:co-en 公式サイトつくばまちなかデザイン株式会社

背景・課題

つくばセンタービルは、1983年に建築家・磯崎新の設計で、隣接するつくばセンター広場と一体的に整備された研究学園都市の象徴的な建築である。その1階東側には「アイアイモール」と呼ばれる飲食店街が広がっていたが、つくばエクスプレス開通後の人の流れの変化や駅前商業の縮小のなかで空洞化が進み、研究学園都市の玄関口にありながら日常的なにぎわいを欠く空間になっていた。象徴的な建築の足元が活気を失っているという状況が、再生の出発点だった。 (参考:つくばセンタービル及びつくばセンター広場のリニューアル - つくば市co-en誕生の経緯 - しびっくぱわー

課題は、空いた飲食店街を別のテナントで埋めるという従来型の発想にとどまらなかった。市とまちづくり会社が問うたのは、「研究機関と研究者・学生が集積するつくばならではの資源を生かして、人が継続的に集まり、新しい活動が生まれ続ける場をどう運営するか」という、ハードの改修の先にある運営設計の問題である。つくば駅周辺には日常的に滞在できる場が少なく、「ここでしかできない体験」が乏しいという自己認識が、後の事業計画資料でも繰り返し語られている。きれいに改修するだけでは遊休化を繰り返しかねないという危機感が、6機能を組み合わせ、プログラムを走らせ続ける運営型の拠点という構想につながった。 (参考:つくばまちなかデザイン第3期事業報告 - つくば市co-en誕生の経緯 - しびっくぱわー

取り組みのプロセス

6つの機能で「働く・出会う・試す」を一つの器に(2022年)

co-enは、用途の異なる6つの機能を意図的に同居させた。中心となるco-workingは約295平方メートルに80席超を備え、黙々と作業に集中できる席、人と話しながら過ごせる席、カフェのようにくつろげる席という性格の異なる席を一続きに配置し、会議室も併設する。co-officeは研究系ベンチャーなどが入居する貸しオフィス区画で、開業当初から市内のベンチャー企業を中心に埋まっていった。co-eventはつくばセンター広場に直接出入りできるイベントスペースで、扉を開ければ広場と一体的に、閉じれば独立した催事空間として使い分けられる。 (参考:co-en コワーキング案内6つの機能で働く人を応援する「co-en」 - NEWSつくば

残る3機能が、co-enを単なるコワーキングと一線を画す「チャレンジを受け止める仕掛け」になっている。co-cookingは、地域食材やクラフトビールを扱うカフェ&バー「Beer & Cafe Engi」と、これから飲食を始めたい人が腕試しできるシェアキッチン「our kitchen」で構成される。co-wallは通路沿いに点在する壁と展示台を使ったアートウォールで、アーティストを招く企画展と、学生や市民に貸し出すレンタルの二系統で運用される。co-wagonは移動できるレンタルワゴンで、自作の雑貨や菓子を売りたい個人、既存店のアンテナショップなどが、最小単位の「小さな商い」を試せる場として位置づけられた。働く機能と、試す・表現する機能を一つのフロアに混在させた点が、co-enの基本設計である。 (参考:co-en co-cooking案内co-en co-wall案内co-en co-wagon案内

なお改修には約3億2,000万円を投じ、民間都市開発推進機構による老朽化ストックを活用したリノベーション型のまちづくりファンド事業の全国第1号案件として進められた。古い建築ストックを壊さずに使いこなす再生手法のモデルケースとして位置づけられている。 (参考:つくばまちなかデザイン co-en紹介6つの機能で働く人を応援する「co-en」 - NEWSつくば

研究機関を巻き込んだ科学プログラムを日常化する(2022〜2024年)

co-enの運営で特徴的なのが、つくばの最大資源である研究機関の集積を、施設の日常的なプログラムへ落とし込んだことである。開業初年度から、ソフトバンクのロボットを使ったプログラミング教室、夏休みの科学実験・工作イベント、研究者を招いた子ども向けワークショップ「アナザーワールド」などを毎月のように開催した。2023年12月からは、市内の研究機関が週替わりで研究の面白さを語る「サイエンスカフェ」を開始し、初年度だけで12機関が登壇するなど、研究者と市民が気軽に出会う定例の場として定着していった。 (参考:つくばまちなかデザイン第3期事業報告 - つくば市co-en サイエンスカフェ案内

この方向性を象徴するのが、科学技術週間に合わせた大型企画である。2024年4月には、産業技術総合研究所やJAXA筑波宇宙センター、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、物質・材料研究機構(NIMS)など14の研究機関がco-enとセンター広場に集まり、化石発掘や実験のワークショップ、研究者によるトークを展開した。翌2025年には参加が23機関・団体へと拡大し、研究都市の知的資源をまちなかへ引き出す回路として機能している。働く場であると同時に、科学を伝えるラボであり教室でもある、という運営側の自己定義が、こうしたプログラムに表れている。 (参考:TSUKUBA SCIENCE & TECHNOLOGY PRE EVENT 2024 - つくばまちなかデザイン科学技術週間プレイベント2025 - co-en

チャレンジを段階的に後押しする仕組みの運用(2022年〜)

シェアキッチンとチャレンジワゴンは、構想にとどまらず、実際に小さな挑戦を商いへと育てる装置として動いている。シェアキッチン「our kitchen」では、カヌレ専門の「Cannelé d'iz」をはじめ、焼き菓子の「Simple Crumb Bakery」、アイシングクッキーの「Ku'um」など、ここを足がかりに活動を広げた作り手が育ち、co-enの周年イベントの「おやつマルシェ」に出店するなど、コミュニティの中で顔の見える関係を結んでいる。カフェ&バー「Engi」の運営は地元の飲食事業者が担い、地域の生産者や醸造所の品を扱うことで、まちの食の担い手とも接続している。 (参考:3周年イベント告知 - co-enつくばまちなかデザイン第2期事業報告 - つくば市

イベントの企画運営は、地域でまちづくり活動を手がけてきた団体「しびっくぱわー」などのパートナーが担い、トークイベント、学生が事業アイデアを発表する「co-en STUDENTS PITCH」、SDGsや防災をテーマにしたゲーム型ワークショップなど、テーマの幅広い催しが切れ目なく企画された。周年イベントでは、入居事業者や利用者、地元クリエイターが出展者として参加する構成をとり、運営会社が一方的に提供するのではなく、利用者自身が場をつくる側に回る仕掛けがとられている。2025年の3周年では、co-enの使い方を来場者と一緒に「実験」するというコンセプトのもと、17のプログラムが並んだ。 (参考:3周年イベント告知 - co-enco-en誕生の経緯 - しびっくぱわー

コンセプトの拡張と4階への機能拡大(2024〜2025年)

開業から2年を経て、co-enは働く場としての中身を更新した。2024年夏には、ワークスペースを集中・個別ブース・会議・コラボレーション・カジュアル・仮眠の6ゾーンに整理し、「人生を豊かにするワークスペース」というコンセプトへ拡張。睡眠の質に着目したヘルスケアの視点を取り入れ、専門資格をもつアドバイザーを置くなど、長時間働く人の体調まで含めて支える方向へ踏み込んだ。あわせて、創業を考える人に経営相談や資金調達のアドバイスを提供する支援プランも整えた。 (参考:co-enリニューアルのお知らせ - PR TIMESco-enリニューアル記念イベント - straightpress

2025年には第二期の機能拡大として、センタービル4階に貸しオフィスを増設し、同年5月15日から入居の受け入れを始めた。1階の交流機能に加えて、より腰を据えて事業を営む区画を上層階に確保することで、出会いから定着までを建物内で受け止めようとする動きである。一方で第二期は、当初構想にあった子連れ向けワークスペースの見直しや設計の難航で計画が縮小・遅延しており、運営の現実的な制約も伴っている。なお、co-enを含むセンタービル全体のリニューアル工事は2024年4月に完了し、同年2月には市民活動拠点「コリドイオ」も開設されている。 (参考:4年連続の赤字 つくばのまちづくり会社、24年度決算 - NEWSつくばつくばまちなかデザイン第3期事業報告 - つくば市つくばセンタービル及びつくばセンター広場のリニューアル - つくば市

この事例の特徴

第一の特徴は、用途の異なる6機能を一つのフロアに同居させ、「働く」場と「試す・表現する」場を意図的に混ぜたことである。多くのコワーキング施設が働く機能に特化するのに対し、co-enはシェアキッチン・アートウォール・チャレンジワゴンという、誰かが何かを始めるための小さな受け皿を併設した。コワーキングの利用者が隣の壁の展示を眺め、ワゴンで売られる菓子の作り手と言葉を交わすといった、用途の越境が日常的に起きる構造になっている。場を機能で区切るのではなく、機能の境界をあえて低くすることで偶発的な出会いを設計した点が、交流拠点としての独自性を生んでいる。 (参考:co-en 公式サイトco-en co-wagon案内

第二に、地域固有の資源である研究機関の集積を、施設のプログラムへ恒常的に取り込んだことである。「科学のまち」というつくばの看板を、講演会のような単発の催しで終わらせず、週次のサイエンスカフェや子ども向けワークショップ、十数機関が集う科学技術週間の大型企画として日常化した。研究者にとっては成果を市民に伝える出口となり、市民にとっては最先端の研究に触れる入口となる。施設が持つ立地と都市の資源を結びつけることで、他の交流拠点が簡単には真似できない「ここでしかできない体験」を生み出している。 (参考:つくばまちなかデザイン第3期事業報告 - つくば市科学技術週間プレイベント2025 - co-en

第三に、挑戦のハードルを段階的に下げる「チャレンジの階段」を施設内に用意したことである。ワゴンで小さく売ってみる、シェアキッチンで限定的に出店してみる、軌道に乗れば貸しオフィスで腰を据える——という、リスクの小さい一歩から本格的な事業化までの段差を、同じ建物の中で連続的に踏めるようにしている。失敗の許容度が高い場をまちなかに用意することが、新しい担い手を生む土壌になるという発想であり、起業支援を制度ではなく「場の使い方」として実装した点に新規性がある。 (参考:co-en co-cooking案内3周年イベント告知 - co-en

調査時点の成果

一方で、施設の活発な運営は、それ自体では十分な収益を生み出せていない。co-en事業の売上は伸びているものの粗利益は薄く、運営会社のつくばまちなかデザインは設立以来4年連続の赤字(2024年度は約3,258万円の経常赤字)が続く。多彩なプログラムを切れ目なく走らせるには企画・運営の人手とコストがかかり、その負担を賃料・サービス収入だけで賄うことの難しさが浮かび上がっている。場のにぎわいと経営の持続性をどう両立させるかが、調査時点で残る最大の論点である(運営会社の経営課題の詳細は関連事例(C9)を参照)。 (参考:4年連続の赤字 つくばのまちづくり会社、24年度決算 - NEWSつくばつくばまちなかデザイン第3期事業報告 - つくば市

他地域への示唆

「働く場」に「試す場」を併設すると、交流拠点は活動を生み始める。 co-enは、コワーキングという働く機能だけでなく、シェアキッチン・アートウォール・チャレンジワゴンという、誰かが小さく何かを始められる受け皿を同じフロアに混ぜた。これにより、施設は席を貸すだけの場から、出会いと挑戦が交差する場へと性格を変えている。交流拠点を計画する自治体や運営者にとって、機能を用途別にきれいに分けるのではなく、あえて境界を低くして越境を誘う設計は、にぎわいを「つくる」のではなく「起きやすくする」ための再現性のある手法である。

地域に固有の資源を、単発の催しではなく日常のプログラムに変換することが差別化につながる。 つくばは研究機関の集積という資源を、週次のサイエンスカフェや十数機関が集う企画として施設の日常へ落とし込み、「ここでしかできない体験」を生んだ。これは研究都市に固有の話に見えるが、本質は「その地域にしかない資産(産業・自然・歴史・人材)を、来訪のたびに出会える定例の体験へ翻訳する」という移植可能な発想である。自分のまちの看板を、イベントの目玉ではなく運営の常設メニューにできるか、が問われる。

挑戦のハードルを段階的に下げる「階段」を、同じ場の中に用意する。 ワゴンでの小さな出店から、シェアキッチンでの限定出店、貸しオフィスでの本格化へと、リスクの小さい一歩から事業化までを連続的に踏める構造は、起業支援を補助制度ではなく「場の使い方」として実装した点で示唆に富む。失敗を許容する小さな受け皿をまちなかに置くことが、新しい担い手を育てる土壌になる。

ただし、場を活発に運営し続けるコストを、収益でどう賄うかを最初から織り込む必要がある。 co-enの事例は、プログラムの充実とにぎわいが、必ずしも運営主体の黒字には直結しないことを率直に示している。多様な催しを継続するには相応の人手とコストがかかり、賃料収入だけでは支えきれない。交流拠点を「運営型」で構想するなら、にぎわいづくりにかかる人件費・企画費をどの収益で賄うのか、当面の不足をどう支えるのかを、開設前の事業計画に現実的に組み込んでおくことが欠かせない。

参照元


2026年6月時点の調査内容に基づいて作成

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