乗務員の手で、手動運転から自動運転へ

ターミナルである「おさかなセンター」駅を、運転席に座った乗務員の方の手動運転によって発車したバスは、3つ目の停留所である「南部図書館」に停車しました。

この停留所は、一般道とBRT専用道の切り替わる場所。同時に、バスが手動運転から自動運転に切り替わる地点ともなっています。

「これから自動運転に入ります」と、車内アナウンス。

どの座席からも見えやすいよう、車内3箇所に取り付けられた大型のマルチモニターには、車内外のカメラ映像や、センサーが捉えた各種データが映し出されており、このバスがどのように人や対向車を検知し、何を判断して、どのように走行しているのかが、刻一刻と反映されています。

モニターの一部は運転席を捉えたカメラ映像となっており、そこではいままさに、乗務員の方がハンドルから手を離し、両膝の上に置くところでした。

切り替わりを感じさせない、自動運転の乗車感覚

バスは静かにバス停を離れ、路面を走り出します。

ハンドルから手を離しているにもかかわらず、見えない手に操られるように小刻みにハンドルは左右に動き、自動運転に切り替わったとはいささかも感じさせないスムーズさで、バスはBRT専用道をまっすぐ伸びやかに進んでいきます。

この自動運転への切り替えは、ボタン2つで済むといいます。

手動運転から自動運転に切り替える、準備用のボタンが1つ。

その後、車内の安全確認、また、乗客がいればその安全確認、そして信号等の確認をして、問題がなければ自動運転のボタンを押せば、いよいよ自動運転の開始となるわけです。

さまざまな状況が待ち受ける自動運転区間

日立市のBRT専用道は幅が狭く、歩道があって歩行者も通行するのが特徴です。

さらに、歩道はガードレールで仕切られている場所だけではなく、車道と歩道の間が縁石のみで、明確に仕切られていない場所もあちこちに点在します。

また、一般道との交差が11カ所、歩行者の横断部が15カ所あるほか、大甕駅西口ターミナルでは、手動運転のバス車両とのすれ違いや追い越しも生じるなど、自動運転中のバスは、さまざまな状況に対応しなければなりません。

安全性を発揮しつつ、バスは自動運転を終了

ひたちBRTの自動運転バスは、このような複雑な道路環境に対応した性能を備えています。

車体の各所に取り付けられたセンサーは、絶えず遠近の対向車や歩行者、障害物などを捉えており、バスに人が近づいていることを察知するやいなや、直ちに徐行を開始。

安全が確保されてから、再びスピードを上げるようになっています。信号を確認した際の挙動も慎重そのものです。

大甕駅西口を経て、河原子BRT停留所より先は、再び手動運転の区間に切り替わります。自動運転から手動運転への切り替えは、ブレーキを深く踏み込むことで行なわれます。その操作を合図として、バスのコントロールは再び手動運転に委ねられました。

バスは無事、終点となる多賀駅へと到着。そののち、乗務員のYさんにお話を伺いました。

好きな仕事に思い切って転職、自動運転の乗務員に

――どのような経緯で、路線バスの運転手になったのですか？また、自動運転バスの乗務員になったきっかけは？

実は、以前はIT関係の仕事をしていたんですが、一度きりの人生なので好きな仕事をしたいと考えて、5年ほど前に思い切ってバス運転手に転職したんです。

子どものころから、バスの待機所に遊びに行って運転手の人たちと仲良くなるほどのバス好きだったものですから。

自動運転バスの乗務員になったのは会社からの指名だったんですが、自分でいいのだろうか、という感じでしたね。自動運転そのものに対しても、路幅の狭いBRT専用道で大丈夫かなとか、期待より不安の方が大きかったのを覚えています。

――実際に自動運転バスに乗ってみて、手動運転と変わらない乗車体験に、とても安心感を覚えました。

私は運転手なので、最初に自動運転のことを聞いたときには、ハンドルは手放し、ブレーキとアクセルも踏めないということで、若干の怖さを感じました。

しかし実際に運転席に座ってみると、相当に安全性に考慮された走行になっていることが感じられました。

システムで人を検知したら停止して、安全が確保されてから動くなど、すごく慎重さを感じますし、運転手としても安心できるところです。

――不安は早い段階で安心に変わったということでしょうか。

はい、いまではBRT専用道区間に入ると、逆に安心するくらいですね。

運転席での様子(写真は停車中です)

自動運転時の、乗務員の仕事とは？

――自動運転走行時には、運転席でどのような作業をなさっているのでしょうか？

自動運転の各種機能が正常かどうかを確認しています。一般道と交差するときなどにはバスは歩行者などを感知していますので、ぶつかったりしないか、人間の目でもチェックしていますね。

ですから車窓はもちろんですが、モニターをしっかりと見ています。

それからバス車内ではお客様に座っていてもらう必要があるので、立っている方がいないか、車内の安全確認も行ないます。

――自動運転の運行開始に向けた、乗務員訓練はどのようなものでしたか？

自動運転の仕組みや、バスの構造把握をするような内容でした。緊急時を想定した訓練もありました。

座学や構内訓練等を含めた訓練。色々と覚えることがあって大変でしたが、指導員の方々から親切ていねいに教えてもらえたので大変助かりました。

――ご乗車のお客さまは知らない、自動運転バス乗務員だからこそ知っているマル秘情報などはありますか？

はい、「見えないレールの上を走行している感覚」です。

実は自動運転バスは、路面上に仮想的に配置された2本のレールの上を走るように設定されているんですね。

車内のモニターにも、その上を走っている様子が表示されています。

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2025年2月3日、実証実験を経ていよいよ営業運行開始となった、ひたちBRT自動運転バスプロジェクト。

総延長約8.7km、うち自動運転区間6.1km。

これだけの長距離を、中型バスによる自動運転で営業運行するのは、日本で初めての試みです。

この連載企画では、日立市が誇るこのプロジェクトを支えるプロフェッショナルたちの、技術や情熱、人となりに迫っていきます。


自動運転バスが運行開始！乗って体験しよう

File No.1 茨城交通 自動運転バス乗務員に密着！

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みちのり無人自動運転バスポータル

みちのりグループ

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毎日の通学やお買い物、仕事や病院通いに欠かせないバス。 
でも、最近、普段乗りたいバスや、夜の便数が減って、不便になったな、と感じることはありませんか？

この背景には、運転手の不足やバス利用者の減少  があります。 

皆さんが日々利用されているバスを維持し、発展させたい。
そんな思いで 現在「無人自動運転バス」の実用化に取り組んでいます！

日立には全国でも珍しい、バス専用道路を走るひたちBRTがあります。 
この道路を活かし、2025年末までに無人での自動運転バスの営業運行を目指しています。

「本当に安全なの？」「どうやって走るの？」 

そんな皆さんの不安や懸念にもお答えしながら、みんなでバスの未来をつくっていきたい。 

このサイトでは、自動運転バスに関する情報発信や、皆さんが気になること、ニーズを投稿いただける意見募集を行います。 
この場を通じて、皆さんとより良い乗り物づくりを目指します！

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