
和白干潟 干潟生き物の観察会と生息調査
福岡市が和白干潟で開催する市民参加型の生き物観察・生息調査イベント。地元高校の科学部と連携し、アサリを使った水質浄化実験や生き物採集を通じて干潟の生態系への理解を深める環境教育の取り組みで、2024年度から半年に一度のペースで継続開催されている。
「干潟生き物の観察会と生息調査」は、福岡市環境局環境監理部環境調整課が和白干潟(福岡市東区)で開催する市民参加型の環境教育イベントである。小学3年生以上を対象に定員約30名で募集され、参加費は無料。地元の福岡工業大学附属城東高校科学部(2025年からは福岡県立香住丘高校も加わる)と連携し、干潟に生息する生き物の採集・観察、アサリを使った水質浄化実験、干潟のごみ拾いなどを行う。 (参考:福岡市 生物多様性(イベント・お知らせ))
2024年度から開始され、以降は春(5月)と秋(10月)の年2回程度、継続的に開催されている。2025年1月に福岡市が開設した「生物多様性ふくおかセンター」(環境省の30by30アライアンスにおける地域生物多様性増進活動支援センター)の事業の一つとして情報発信されている。 (参考:5月25日(日)、和白干潟にて「干潟生き物の観察会と生息調査」を実施しました!、生物多様性ふくおかセンター - 環境省30by30アライアンス)
和白干潟は博多湾の北東端、福岡市東区に位置する南北約1kmの三日月形の干潟で、面積は約80haに及ぶ。遠浅で砂質の地形にアサリやウミニナなどの貝類、ゴカイ類、カニ類が生息し、これらを餌とする渡り鳥が飛来する。国内では飛来が珍しいミヤコドリに加え、世界的な希少種であるクロツラヘラサギの姿も、この干潟では年中行事のように毎年確認されている。 (参考:水鳥の楽園 和白干潟、和白干潟 - Wikipedia)
こうした生態系の価値から、和白干潟一帯は2003年に国指定鳥獣保護区(周辺水域を含め254ha)に指定された。一方で1978年には全面埋め立て計画が持ち上がったが住民の反対により撤回され、代わって1994年からは隣接地に人工島「アイランドシティ」(401ha)の造成が始まった。1995年以降は海水の流動阻害を一因とするアオサの異常繁茂が繰り返し発生し、底生生物への悪影響が指摘されるなど、開発と保全がせめぎ合う場所であり続けてきた。 (参考:和白干潟 - Wikipedia)
こうした環境変化のなか、和白干潟をフィールドに研究を行う地元高校の科学部(福岡工業大学附属城東高校)は「水環境の悪化などによりアサリなどの干潟で生活する生物に触れる機会が減少している」と課題を挙げている。生き物と出会う体験機会の減少は、次世代の環境意識醸成という観点でも課題となっていた。 (参考:福岡工業大学附属城東高等学校 - マリンチャレンジプログラム)
なお、和白干潟では1988年発足の市民団体「和白干潟を守る会」が既に長年、月例の清掃・自然観察活動や学校向け環境教育プログラムを継続しており、2013年にはユネスコ「プロジェクト未来遺産」にも登録されている。本企画は、こうした既存の市民活動に加えて、福岡市が行政主導で新たな参加の窓口を設ける形で位置づけられる。 (参考:福岡市 和白干潟を守る会、未来遺産運動ニュース2024年12月号)
参加募集と実施体制
イベントは福岡市環境局環境監理部環境調整課が主催し、和白干潟「海の広場」(東区和白4丁目)を集合場所として実施される。対象は小学3年生以上とし、小学生の場合は保護者の同伴を条件とする。定員は約30名で、応募多数の場合は抽選となる。参加費は無料で、ファックスまたはメールで事前申し込みを受け付ける。 (参考:福岡市 生物多様性(イベント・お知らせ))
活動内容
当日は約2時間、干潟に入って生き物を採集し種類を調べる生息調査を行う。あわせてアサリなどの二枚貝を使った水質浄化実験を実施し、干潟の生き物が水をきれいにする働きを参加者が体感できるようにしている。過去の回では、干潟に流れ着いたペットボトルなど漂着ごみの回収作業もあわせて行われた。 (参考:5月25日(日)、和白干潟にて「干潟生き物の観察会と生息調査」を実施しました!、福岡市 生物多様性(イベント・お知らせ))
高校科学部との連携
企画には福岡工業大学附属城東高校科学部が協力しており、2025年5月の回からは福岡県立香住丘高校も加わった。城東高校科学部は日本財団などが支援する「マリンチャレンジプログラム」に2023年度採択され、和白干潟のアサリを対象に、大潮の日ごとに個体を採取して殻長・殻高・殻幅や成熟度、軟体湿重量を計測し産卵期を明らかにする独自研究を進めている。観察会では、こうした研究活動で培われた知見や調査手法が、参加者向けの解説・案内にも生かされている。 (参考:福岡工業大学附属城東高等学校 - マリンチャレンジプログラム、5月25日(日)、和白干潟にて「干潟生き物の観察会と生息調査」を実施しました!)
開催実績
2024年度の開始以降、春・秋の年2回程度のペースで継続されている。2025年は5月25日に市民・城東高校・香住丘高校が参加して開催され、同年10月18日(申込締切10月2日)にも同様の内容での開催が告知された。 (参考:5月25日(日)、和白干潟にて「干潟生き物の観察会と生息調査」を実施しました!、福岡市 生物多様性(イベント・お知らせ))
高校の研究活動と接続した観察会
本企画は、協力校の科学部が独自に進める学術的な調査研究(アサリの産卵期研究)と接続している点が特徴的である。研究に取り組む高校生自身が観察会の担い手となることで、参加者は単なる自然観察を超えて、地域の環境課題に向き合う調査研究の一端に触れる機会を得ている。 (参考:福岡工業大学附属城東高等学校 - マリンチャレンジプログラム)
協力校の拡大
2024年度は福岡工業大学附属城東高校科学部のみとの連携だったが、2025年度には福岡県立香住丘高校が新たに加わった。単発のイベント委託ではなく、複数の地元校を巻き込みながら協力体制を広げている点は、学校と行政の連携を継続的に発展させるモデルとして参考になる。 (参考:5月25日(日)、和白干潟にて「干潟生き物の観察会と生息調査」を実施しました!)
体験を通じた生態系サービスの理解
アサリによる水質浄化実験は、干潟が持つ水質浄化機能という抽象的な生態系サービスの概念を、参加者が目の前で体感できる形に翻訳する工夫である。生き物を「見る」だけでなく、その機能を「実験で確かめる」ことで、干潟保全の意義への理解を深める設計になっている。 (参考:5月25日(日)、和白干潟にて「干潟生き物の観察会と生息調査」を実施しました!)
既存の市民活動との役割分担
和白干潟では1988年から市民団体「和白干潟を守る会」が月例の清掃・観察活動を継続してきた。本企画はこれと重複するのではなく、行政主催・年2回・事前応募制という異なる形式の参加窓口を新設することで、既存の市民活動では届きにくい層(申込制のイベントに参加しやすい家族層など)への接点を広げる役割を担っていると整理できる。 (参考:和白干潟の環境教育プログラム)
2024年度の開始から2025年10月までに、確認できるだけで複数回(2024年春・秋、2025年春)の開催実績があり、同年秋(10月18日)にも開催が告知されるなど、半年に一度のペースでの継続開催が定着している。 (参考:福岡市 生物多様性(イベント・お知らせ))
参加者からは「楽しみながら干潟について学べた」「生物多様性の大切さを感じた」「様々な生き物について知ることができた」といった声が寄せられており、水質浄化実験や生き物採集を通じた体験的な学びが参加者の理解につながっていることがうかがえる。 (参考:5月25日(日)、和白干潟にて「干潟生き物の観察会と生息調査」を実施しました!)
協力校は2024年度の1校から2025年度に2校へ拡大しており、学校側の科学部にとっても、自校の研究フィールドである和白干潟で市民向けに成果を発信する機会となっている。もっとも、生息する生物種数や個体数の経年変化など、干潟の保全効果そのものを定量的に示すデータは公開情報の範囲では確認できず、現時点での成果は開催実績と参加者の定性的な評価にとどまる。 (参考:福岡工業大学附属城東高等学校 - マリンチャレンジプログラム)
研究活動を持つ地元校をパートナーに据える
一過性のゲスト講師依頼ではなく、対象フィールドで継続的な研究を行っている地元高校の部活動と連携することで、観察会に専門性と継続性を与えられる。生徒自身が調査手法や発見を語り手として参加者に伝えることは、学校側の探究学習の発表機会にもなり、行政・学校双方にメリットのある関係を築きやすい。
体感型の実験を組み込む
生き物を見せるだけでなく、アサリの水質浄化実験のように、生態系の機能を来場者自身が手を動かして確かめられる要素を加えることで、「なぜこの環境を守る必要があるのか」という理解を促しやすくなる。抽象的な生態系サービスの説明よりも、体感を伴う学びの方が定着しやすい。
開発圧力や環境ストレスを抱える場所こそ教材にする
和白干潟は埋め立て計画や人工島造成、藻類の異常繁茂など、開発と保全がせめぎ合ってきた場所である。こうした課題を抱えた現場は、公開を避けるべき対象ではなく、参加者が地域の環境課題を自分事として考えるための教材になり得る。保全上の課題をあえて説明に組み込むことで、観察会が単なるレクリエーションを超えた意味を持つ。
既存の市民団体と競合しない参加窓口を設計する
既に長年活動する市民団体がある地域で、行政が同種の活動を新設する際は、頻度や対象者、申込方式を変えることで、既存団体の活動と補完関係を築きやすい。和白干潟の事例のように、月例の市民主導プログラムと、年2回の行政主導・事前応募制プログラムを並走させることで、それぞれ異なる層への接点を増やせる。
2026年08月時点の調査内容に基づいて作成
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