
パークアンドライドの取組(京都市×イオンモール×タイムズ24)
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
京都市がイオンモール3施設・タイムズ24と連携し、観光シーズンの郊外型商業施設駐車場(約5,900台)を公共交通への乗換拠点として開放する取組。2023年の単独モール実施から拡大し、季節ごとに継続している設計と成果・課題を追う。
京都市は、イオンモール株式会社、タイムズ24株式会社(パーク24グループ)と連携し、イオンモール京都五条・京都桂川・KYOTOの3施設が持つ駐車場(合計約5,900台分)を、観光シーズン限定で「パークアンドライド(P&R)」駐車場として開放する取組を実施している。観光客が郊外のモール駐車場に車を停め、そこから鉄道やバスなどの公共交通に乗り換えて市内観光地へ向かうことで、市中心部への自家用車流入と、それに伴う道路混雑を抑制することを狙いとしている。 (参考:国土交通省近畿地方整備局「京都市における観光課題対策の紹介」)
この取組は2023年秋にイオンモール京都五条単独で先行実施された後、2024年秋に3施設体制へ拡大し、以降は春・秋の観光シーズンごとに継続実施されている。直近では2025年11月1日~30日に3施設で実施され、2026年3月にも同様の枠組みで実施された。駐車場という民間資産を自治体が新たに整備することなく借り受け、公民3者がそれぞれの持ち場(政策立案・施設提供・現場運営)を分担する官民連携モデルである点が特徴といえる。 (参考:京都市公式サイト(令和7年秋の取組)、タイムズ24プレスリリース(2024年秋))
京都市の年間観光客数はコロナ禍による落ち込みからほぼ回復し、令和4年時点で4,361万人に達している。観光客が市にもたらす影響について、市民意識調査では「観光地・観光施設周辺の混雑」を43.8%、「道路の混雑」を43.9%、「路線バスや地下鉄等の公共交通機関の混雑」を41.6%が問題として挙げており、混雑対策は観光政策上の重要課題となっている。 (参考:国土交通省近畿地方整備局「京都市における観光課題について」)
入洛交通における自家用車の分担率は、公共交通利用の呼びかけなどにより平成27年(2015年)頃には6.3%まで低下したが、コロナ禍で公共交通の混雑を避ける動きが強まったこともあり、令和4年には14.1%まで再上昇している。特に週末の観光ピーク時には、府外ナンバーの自家用車の流入が顕著で、東山・五条エリアの休日交通量調査では自家用車のうち41%が京都府外ナンバーを占めた(平日は26%)。秋の観光ピーク期(2022年11月下旬)の道路混雑による損失時間は12時間あたり179,643人時間に達し、閑散期(同年2月)の125,218人時間から約4割増加していた。 (参考:国土交通省近畿地方整備局「京都市における観光課題について」)
京都市は2017年9月に国土交通省から鎌倉市とともに「観光交通イノベーション地域」に選定され、「京都エリア観光渋滞対策実験協議会」を設置してICT・AIを活用した渋滞対策の検討を重ねてきた。その中でパークアンドライドは、臨時バスの増発や市バス・地下鉄の無料乗継、観光バスの予約制導入などと並ぶ流入抑制策の一つに位置付けられている。ただし、市が指定する重点利用促進駐車場(大津・長岡京・山科など)は郊外の公共駐車場が中心で容量に限りがある。一方、高速道路の出入口付近に立地する大型商業施設は、駐車場容量が大きく、平日日中や早朝など自らの営業ピーク以外の時間帯には遊休スペースが生じやすい。この余剰容量を新規投資なしに公共交通転換の受け皿として活用しようとした点が、イオンモールとの連携の出発点になっている。 (参考:京都市:京都エリア観光渋滞対策実験協議会 資料、京都観光パークアンドライド駐車場案内)
1. イオンモール京都五条単独での先行実施(2023年秋)
京都市とイオンモール、タイムズ24の連携は、2023年秋にイオンモール京都五条1施設を対象としたパークアンドライドの実施から始まった。 (参考:タイムズ24プレスリリース(2024年秋))
2. 好評を受けた3施設体制への拡大(2024年秋)
2023年度の実施が好評だったことを踏まえ、2024年秋にはイオンモール京都桂川・KYOTOを加えた3施設体制に拡大された。京都五条・KYOTOは11月1日~29日の平日限定、京都桂川は11月1日~12月1日の全日で実施され、京都五条・桂川は観光施設利用の証明とモール購入レシートの提示で当日無料、KYOTOは500円(税込)で利用できる仕組みとされた。 (参考:タイムズ24プレスリリース(2024年秋)、パーク24プレスリリース(2024年秋))
3. 官民3者による役割分担
取組は京都市(都市計画局歩くまち京都推進室)、イオンモール株式会社、タイムズ24株式会社の3者連携で運営されている。京都市が渋滞緩和という政策目的の設定と情報発信の枠組みづくりを担い、イオンモールが各施設の駐車スペース提供と館内サイネージ・公式アプリでの周知を、駐車場運営会社であるタイムズ24が現場でのオペレーションを担い、自社の会員制メール配信「タイムズクラブ」を通じて利用者へ直接告知する役割を分担する。 (参考:京都市公式サイト(令和7年秋の取組))
4. 「観光利用の証明」と「購入レシート」による利用条件の設計
無料または割引での駐車には、当日に市内の観光・文化施設を訪れたとわかる証憑(拝観券やチケットの半券など)と、モールでの購入レシートをあわせて提示する必要がある。京都桂川では、これに代えて京都市交通局発行の「地下鉄・バス1日券」の提示でも対応している。この二重の条件により、単に無料駐車場を探して利用する車と、実際に公共交通で観光しモールでも消費した利用者とを区別する設計になっている。 (参考:タイムズ24プレスリリース(2024年秋))
5. 高速道路出口からの誘導と多チャネルでの情報発信
高速道路出口から各駐車場に至る経路には横断幕や誘導看板を設置しているほか、京都市のパークアンドライド特設サイト、LINE、X(旧Twitter)に加え、イオンモール公式サイト・アプリ・館内サイネージ、タイムズクラブのメールマガジンなど複数のチャネルを組み合わせ、出発前・移動中・現地到着直前という異なるタイミングで情報を届けている。 (参考:国土交通省近畿地方整備局「京都市における観光課題対策の紹介」)
6. 春・秋の年2回実施への定例化
2024年秋の実施結果を踏まえ、2025年春・秋、2026年春と、3施設体制のまま春・秋の観光シーズンごとに継続実施されるようになった。2026年春の実施では、イオンモール京都五条・京都桂川が3月20日~4月5日、イオンモールKYOTOが3月23日~4月3日の平日限定で行われている。 (参考:タイムズ24プレスリリース(2026年春))
1. 新規投資なしでP&R拠点を確保する「借りる」発想
自治体が新たに駐車場を整備・取得するのではなく、高速道路インターチェンジ付近に立地する大型商業施設が保有する遊休駐車容量を借り受けてP&R拠点とする点が特徴である。3施設合計で約5,900台という規模は、市の重点利用促進駐車場を単体で新設しようとすれば相応の投資が必要になる規模であり、既存の民間ストックを活用することでこれを回避している。
2. 「観光証明+購入レシート」による利用の質の担保
駐車料金の無料化は単独では「安いから停める」需要を招きやすいが、この事例では観光施設利用の証明とモール購入レシートの両方を条件とすることで、公共交通での観光行動とモールでの消費機会創出という2つの狙いを同時に満たす設計になっている。イオンモール側にとっても、来街者数や売上への貢献が期待できるため、単年度の協力にとどまらず4年連続(2023年秋〜2026年春)で継続する動機付けになっていると考えられる。
3. ラストワンマイルのシェアサイクル連携
イオンモール京都五条では、電動アシスト自転車を貸し出すシェアサイクル「CLEW」と連携し、P&R駐車場の利用者には「最初の60分無料」または「1日乗り放題パスが1,650円から550円に割引」といった特典を付与している。駐車場に車を停めた後、最寄り駅や近隣観光地までの「最後の1マイル」の移動手段までを一体で提供しようとする設計であり、単なる駐車場開放にとどまらない乗換体験全体への目配りがうかがえる。 (参考:CLEW「イオンモール京都五条 パークアンドライド特別企画」)
4. 施設特性に応じた料金・対象日の差別化
3施設一律の条件ではなく、駐車場の規模・立地・営業時間に応じて料金体系(無料か500円か)や対象曜日(全日か平日限定か)を変えている。駅前立地でオフィス需要も抱えるKYOTOは平日中心・有料、郊外型で駐車容量に余裕がある五条・桂川は全日・無料という使い分けは、画一的な制度設計ではなく施設ごとの需給バランスを踏まえたものといえる。
1. 重点利用促進駐車場等の利用実績
京都市がイオンモール3施設を含めて位置付ける「重点利用促進駐車場等」全体でのP&R利用件数は、令和6年度(2024年度)の秋の実施期間(11月1日~12月1日)で2,893台となり、前年度(令和5年度)比2.3倍に増加した。市はこの実績を踏まえ、翌年の春の観光シーズン(2025年3月20日~30日)にも同様の駐車料金無料対応を実施している。なお、この件数はイオンモール3施設分のみを切り出した数値ではなく、他の重点駐車場や臨時開放分を含む取組全体の合計値である点には留意が必要である。 (参考:国土交通省近畿地方整備局「京都市における観光課題対策の紹介」)
2. 4年連続での継続・拡大という定性的な成果
2023年秋の単独モールでの試行から、2024年秋の3施設拡大、2025年春・秋、2026年春の継続実施へと、取組自体が縮小や中断なく4年連続で拡大・定着してきたことは、それ自体が一定の成果と評価できる。京都市・イオンモール・タイムズ24のいずれにとっても継続する経済的・政策的合理性があったことを示唆している。
3. 「無料化だけでは利用が伸びにくい」という課題も併存
一方で、2025年秋に市が公共交通スポット・パークアンドライドスポットを組み込んで実施したデジタルスタンプラリー「秋のスマートさんぽ」の参加データでは、公共交通スポットの取得は一定進んだのに対し、パークアンドライドスポットの取得は伸び悩んだ。協議会資料では「ゲーミフィケーション施策は公共交通利用促進との親和性が高い一方、パーク&ライド利用促進には更なる工夫が必要」と総括されており、駐車料金の無料化や情報発信の強化だけでは、公共交通乗り換えという行動そのものへの誘導は依然として容易ではないことがうかがえる。 (参考:国土交通省近畿地方整備局 第12回京都エリア観光渋滞対策実験協議会 資料)
1. 「駐車場を新設せず借りる」設計は再現性が高い
郊外型の大型商業施設と幹線道路・高速道路インターチェンジが近接する立地は、京都市に限らず地方都市に広く存在する。自治体が新規に用地取得・整備を行うのではなく、既存の民間駐車場ストックの遊休時間帯を借り受けてP&R拠点とする発想は、初期投資を抑えつつ観光地の交通需要マネジメントに着手したい他地域にとって、属人性に依存しない再現可能なモデルとなり得る。
2. モール側にも便益を設計することが継続の鍵
この事例が4年間途切れずに続いている背景には、観光施設利用証明とモール購入レシートの提示を条件とすることで、モール側にも来店・売上機会という便益が生まれる設計がある。単に「駐車場を無料開放してほしい」という自治体からの一方的な依頼ではなく、商業施設側の事業性にも資する条件設計を組み込むことが、複数年にわたる官民連携を持続させる上で重要な着眼点になる。
3. 「停めやすさ」だけでなく「乗り換え後の快適さ」まで設計する
イオンモール京都五条とシェアサイクル「CLEW」との連携に見られるように、駐車場から最終目的地までのラストワンマイル手段を組み込むことで、P&Rの利用体験全体の質を高めようとしている点は、他地域が模倣する際の具体的な着眼点になる。
4. 「無料化=利用増」という単純な図式では捉えきれない
一方で、京都市自身の協議会資料が「パーク&ライド利用促進には更なる工夫が必要」と課題を認めている点は重要な示唆である。経済的インセンティブ(駐車料金の無料化)と情報発信を組み合わせても、公共交通への乗り換えという行動変容には限界があることを示しており、他地域がP&Rを導入する際は、無料化や広報の強化だけに頼らず、乗り換え動線の分かりやすさや所要時間の優位性など、行動変容を後押しする複数の要素を組み合わせて設計する必要がある。
2026年8月時点の調査内容に基づいて作成
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