
ふくSeeぬまづ福祉まつり - 垣根のない出展配置で福祉を「ふつうのこと」にする市民主体の祭り
静岡県沼津市で2010年頃から続く「ふくSeeぬまづ福祉まつり」。福祉団体と飲食店・企業のブースを垣根なく配置し、市民が自然に福祉と出会う場をつくる。就労移行支援施設の利用者が出演・出店の主役となる点も特徴。
「ふくSeeぬまづ福祉まつり」は、静岡県沼津市で毎年秋に開催されている福祉をテーマにした市民参加型のイベントである。「福祉ってふつうのこと」を合言葉に、福祉関係団体と一般の飲食店・企業のブースを区別せず同じ会場に混在させ、来場者が自然に福祉と出会う機会をつくることを目的としている。主催は「ふくSeeぬまづ福祉まつり実行委員会」で、認定NPO法人マムに所属する川端馨太氏が実行委員長を務める。2025年には第16回を数え、沼津市の秋の恒例行事として定着しつつある。 (参考:沼津で「ふくsee福祉まつり」 84団体出店へ(沼津経済新聞)、2025第16回ふくseeぬまづ福祉まつり開催情報(号外NET沼津市))
会場のキラメッセぬまづ(沼津市大手町)はJR沼津駅から徒歩圏内でバリアフリー対応・駐車場完備という条件を備え、入場無料・予約不要で誰でも参加できる。新型コロナウイルス感染拡大による2年間の中断を経て2022年に再開し、2024年(第15回)には出展団体数がコロナ禍前の最盛期水準である84団体まで回復した。 (参考:ふくsee ぬまづ福祉まつりに参加してきました!(WheeLog!)、2022ふくseeぬまづ福祉まつり参加報告(国際セラピードッグ協会))
主催団体の中核を担う認定NPO法人マムは、地域で障害のある子どもとその家族へのボランティア支援を行っていた有志が、支援費制度への移行を機に法人化した団体である。就労移行支援など障害福祉サービスを日常的に提供する立場から、福祉関係者は業界内では横のつながりを持つ一方、直接関わりのない一般市民にとっては福祉団体の活動が見えにくく、「特別なもの」として距離を置かれがちだという課題認識があった。 (参考:マム | NPO法人ポータルサイト(内閣府))
こうした背景から、まつりは当初から「福祉業界内の横のネットワークをつなげる」ことと「福祉を身近に感じてもらう」ことの両方を目的として企画された。実行委員長は毎年のように「福祉は誰にでも身近で、特別なことではない」という趣旨の発言を繰り返しており、この課題認識がまつりの一貫したコンセプトになっていることがうかがえる。 (参考:沼津で「ふくsee福祉まつり」 84団体出店へ(沼津経済新聞))
まつりの大きな特徴は、福祉関係団体のブースと地元飲食店・一般企業のブースを分けずに同じ会場内に混在させる配置である。実行委員長は「団体同士が垣根を越えて交流を持ってほしい」と述べ、来場者が「宝探し感覚で各ブースを回ってもらえたら」という狙いを語っている。福祉に関心の薄い来場者であっても、飲食店やキッチンカー目当てに訪れる過程で自然に福祉団体のブースに立ち寄る動線が意図的に作られている。 (参考:沼津で「ふくsee福祉まつり」 84団体出店へ(沼津経済新聞))
10時の開始から15時の終了まで、ステージでのパフォーマンスとキッチンカーでの飲食提供を軸としたプログラムが組まれている。出展内容も幅広く、福祉団体による活動紹介・相談対応に加え、介護・福祉機器を試せるコーナーや、震災遺児を支援するための募金型バザーなど、性格の異なる企画が同時に並ぶ。2025年の第16回では、就労継続支援事業所「クローバー」の利用者らが作業の合間に練習を重ねたダンスパフォーマンスを披露するとともに、もつ煮やチリドッグまんなどの飲食物販売も行った。 (参考:2025第16回ふくseeぬまづ福祉まつり開催情報(号外NET沼津市)、第16回ふくseeぬまづ福祉まつり(まんぱわーnet))
まつりは2020年・2021年は新型コロナウイルスの感染拡大により開催が見送られ、2022年に3年ぶりに再開した。実行委員長は2024年(第15回)の開催にあたり「コロナ禍が明け通常開催になり、ようやく最盛期と同じ数の出展団体数に戻った」と述べており、出展団体数の回復に数年を要したことがうかがえる。 (参考:2022ふくseeぬまづ福祉まつり参加報告(国際セラピードッグ協会)、沼津で「ふくsee福祉まつり」 84団体出店へ(沼津経済新聞))
バリアフリー情報共有アプリ「WheeLog!」を展開する団体は、沼津市リハビリテーション連絡協議会とともに2019年のまつりに出展し、模造紙の地図に来場者が付箋でバリアフリー情報を書き込む「アナログ版WheeLog!」を実施した。デジタルアプリの概念を体験的に伝える企画として来場者に受け入れられ、同団体のブログでは、この参加を経て複数の地域からWheeLog!まち歩きイベント開催の要望が寄せられ、地域全体でイベント運営を支援していく新たな体制づくりを進めていると報告されている。 (参考:ふくsee ぬまづ福祉まつりに参加してきました!(WheeLog!))
本まつりの特徴は、福祉団体のブースと一般の飲食店・企業のブースを区別せず同じ会場に配置する点にある。追加の予算や新たな仕組みを要さない「配置の工夫」だけで、福祉に無関心な来場者と福祉団体との接点を作り出している。専用の広報や説明員を増やさずとも、動線設計そのものが「福祉を身近に感じてもらう」という目的を達成する手段になっていると考えられる。 (参考:沼津で「ふくsee福祉まつり」 84団体出店へ(沼津経済新聞))
就労移行・就労継続支援施設の利用者が、ステージパフォーマンスの出演者や調理・接客を担う出店者として参加している点も特徴である。日頃の訓練の成果を地域住民の前で発表・提供する経験は、福祉サービスの受益者を「支援の対象」から「まつりの担い手」へと位置づけを転換させる機会になっていると言える。 (参考:2025第16回ふくseeぬまづ福祉まつり開催情報(号外NET沼津市)、第16回ふくseeぬまづ福祉まつり(まんぱわーnet))
実行委員会は「ふくSeeぬまづ福祉まつり実行委員会」という名称で活動しており、特定の一法人が単独で主催する形態ではなく、福祉関係者ら有志が中心となって運営してきたとみられる。行政からの委託事業であることを示す情報は確認できず、福祉業界内の当事者が自らの課題意識から立ち上げ、15年以上にわたり実行委員長を含む体制を維持してきた点は、他地域で類似の取り組みを検討する際の運営モデルとして参考になる。 (参考:沼津で「ふくsee福祉まつり」 84団体出店へ(沼津経済新聞))
確認できた範囲では、来場者数を含む定量的な効果測定の公表資料は見当たらなかったが、以下の点が事実として確認できる。
(参考:沼津で「ふくsee福祉まつり」 84団体出店へ(沼津経済新聞)、2025第16回ふくseeぬまづ福祉まつり開催情報(号外NET沼津市))
福祉団体と一般ブースを混在させる会場配置は、予算をかけずに実施できる再現性の高い工夫である。福祉関連イベントに限らず、特定のテーマに関心の薄い層を呼び込みたい他分野のイベントでも応用可能な考え方といえる。
就労移行・就労継続支援施設の利用者が地域行事の中で出演・出店の主体として参加できる機会を設けることは、施設単体では作りにくい「地域住民との接点」を提供する。他地域でも、既存の地域まつりや商店街イベントに福祉施設の出展枠を設けることで、同様の効果を期待できる可能性がある。
一方で、本まつりの資金源や具体的な予算規模、実行委員会の事務局体制の詳細は公開情報からは確認できなかった。15年以上の継続を支えてきた運営体制(特定のNPO法人職員が実行委員長を継続的に担うなど)には、属人的な要素が含まれている可能性がある。他地域で同様の取り組みを立ち上げる際は、特定の個人・団体に依存しすぎない事務局体制や、後継者への引き継ぎの仕組みをあらかじめ検討しておくことが望ましい。
2026年7月時点の調査内容に基づいて作成
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