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千葉市動物公園×イオン環境財団 生物多様性保全連携協定
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千葉市動物公園×イオン環境財団 生物多様性保全連携協定

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千葉市動物公園が2023年7月にイオン環境財団と締結した生物多様性保全協定。かつて水田だった園内の「大池」で9年ぶりの生物調査を専門機関と実施し、科学的根拠に基づく再整備計画とゾーニングにより外来種対策と希少種保全を両立させる取り組み。

千葉市動物公園×イオン環境財団 生物多様性保全連携協定

概要

千葉市動物公園と公益財団法人イオン環境財団は2023年7月13日、千葉市役所において「千葉市動物公園における生物多様性に関する連携協定」を締結した。千葉市によれば、調査から保全活動、教育普及までを一括して扱う協定を動物園が締結するのは国内外でも類を見ないという。協定は①環境・生物等の調査・保全、②植樹活動、③環境教育活動、④ボランティア活動の4つを柱とし、園内の水辺エリア「大池」を主な舞台に、生態系調査から再整備計画の策定、子ども向けの環境教育プログラムまでを一体的に展開している。 (参考:千葉市動物公園 公益財団法人イオン環境財団と生物多様性に関する事業を推進するための連携協定を締結しました!|千葉市千葉市と公益財団法人イオン環境財団との千葉市動物公園における生物多様性に関する連携協定について|イオン株式会社

協定締結を受け、動物公園は外部の専門機関に委託して大池の生物調査を9年ぶりに再開し、2024年3月に「千葉市動物公園大池生物調査及び再整備計画」としてまとめた。この計画に基づき、大池周辺を「レクリエーションゾーン」「バッファゾーン」「生物多様性保護ゾーン」の3つに区分し、来園者に開かれた空間と、手つかずのまま保全すべき空間を明確に分けて管理する方針を打ち出している。千葉市公式サイトによれば、2026年7月時点で正門付近での桜の植樹活動、9回にわたる園内清掃、子ども向け動画制作プログラム「CHIBA-ZOOTUBEプロジェクト」の開催などが継続している。 (参考:千葉市動物公園 公益財団法人イオン環境財団と生物多様性に関する事業を推進するための連携協定を締結しました!|千葉市千葉市動物公園大池生物調査及び再整備計画|千葉市

背景・課題

かつて水田だった大池が抱えていた「忘れられた自然」という課題

大池は、千葉市動物公園が1985年に開園する以前は水田と斜面林からなる谷津田だった場所を整備し、開園時から雨水調整池・野生生物観察エリアとして供用されてきた、大池ゾーン約18,500平方メートル(内水面約6,600平方メートル)のエリアである。動物の展示スペースとは性格が異なり、立ち入りを制限した野生生物観察エリアとして扱われてきたことから、管理の手が十分に入らなかった結果、樹木や水生植物が繁茂し、アメリカザリガニをはじめとする外来種が定着する状況が生まれていた。さらに正門からのアクセスが行き止まりの一本道のみで他に通じる園路がないため、大池の存在自体を知らないまま帰る来園者が大半を占める状態が続いていた。 (参考:大池の再整備について|千葉市動物公園千葉市動物公園大池生物調査及び再整備計画|千葉市

老朽化する動物園の再生構想の中に位置づけられた大池

2014年の「千葉市動物公園の在り方に関する基礎調査」では、展示施設・展示形態の老朽化への対応と来園者満足度の底上げが急務な課題として挙げられた。これを受けて策定された「千葉市動物公園リスタート構想」では、大池をひとつの大きなビオトープに見立て、野鳥に限らず多様な生き物や生態系にじかにふれられる場として生かす方向性が打ち出された。同年から2016年にかけては専門学校のゼミが3年間にわたり大池の水生生物・土壌動物・野鳥に関する研究調査を実施していたが、その後は本格的な調査が途絶えていた。 (参考:千葉市動物公園大池生物調査及び再整備計画|千葉市

「持続可能な社会」への共通認識から生まれた協定

千葉市とイオン環境財団は、「持続可能な社会の実現のために、生物多様性の保全がより不可欠である」との共通認識のもと、多様な立場の住民が大池を訪れ、生き物や自然環境について考え行動するきっかけとなる場を築くことを目指し、協定を結んだ。イオン環境財団は世界各地で植樹活動を展開し累計1,255万本以上の植樹実績を持つ団体であり、千葉市動物公園にとっては、単発の寄付や協賛にとどまらない、調査から教育まで一気通貫で伴走するパートナーを得たことになる。 (参考:生物多様性のさらなる保全へ。イオン環境財団と千葉市が新たなパートナーシップを締結|月刊Vane Online千葉市と公益財団法人イオン環境財団との千葉市動物公園における生物多様性に関する連携協定について|イオン株式会社

取り組みのプロセス

協定締結と3年間の取り組み方針の設定(2023年7月)

2023年7月13日、千葉市長・神谷俊一氏とイオン環境財団専務理事・山本百合子氏(理事長は岡田元也氏)が協定を締結した。協定は、①大池周辺の生物多様性調査・計画・保全活動、②園内樹林地再生を目的とした植樹、③正門前のさくら並木再生、④環境教育活動の継続、⑤市民・イオン従業員による森林整備ボランティア活動を、当面3年間の取り組みとして掲げた。 (参考:生物多様性のさらなる保全へ。イオン環境財団と千葉市が新たなパートナーシップを締結|月刊Vane Online

専門団体RGEEAへの委託による生物調査(2023年6月〜2024年3月)

動物公園は「持続可能な生態系を考える環境共育研究会(RGEEA)」に大池の生物調査を委託し、2023年6月の予備調査を経て、同年7月から本格的な調査を開始した。調査は、主にわなを仕掛けて捕獲する方式で行う「水生生物調査」、青木淳一氏(横浜国立大学名誉教授)が考案した32種の指標生物を用いる判定の仕組みを取り入れた「土壌動物調査」、目視・鳴き声による「野鳥生息調査」、専門家の協力を得た「カラス生息調査」の4本立てで、2024年3月まで9カ月間にわたって実施された。 (参考:千葉市動物公園大池生物調査及び再整備計画|千葉市

大池セミナーによる調査経過の公開(2023年7月〜2024年1月)

調査と並行して、動物公園は中学生以上を対象とした公開講座「大池セミナー」を全4回開催した。2023年7月には大池の再生に2014年から取り組んできた動物園ライター・森由民氏による講演を行い、11月に「大池の意義そして外来種と獣害」、12月に「大池で見つかった生きものについて」、2024年1月に「動物園にいきもの広場をつくる」をテーマに開催し、調査の途中経過や意義を市民に共有した。 (参考:大池セミナー|千葉市動物公園

調査結果を踏まえた再整備計画の策定とゾーニング(2024年3月〜7月)

RGEEAは調査結果を「千葉市動物公園大池生物調査及び再整備計画」として取りまとめ、2024年3月付で策定、同年7月に公開した。計画では大池周辺を、来園者に開放し憩いの場とする「レクリエーションゾーン」、園芸種を植えず在来植物を残す緩衝地帯の「バッファゾーン」、立入禁止として自然の遷移に任せる「生物多様性保護ゾーン」の3つにゾーニングし、保全活動・人材育成・普及啓発の3方向で今後の実施事項を整理した。あわせて元東邦大学理学部生物学科教授の長谷川雅美氏、いきもの文化研究所所長で元井の頭自然文化園長の成島悦雄氏という2名の有識者による評価レポートを計画書に収録し、外部の目による検証を経たかたちで公表している。 (参考:千葉市動物公園大池生物調査及び再整備計画|千葉市

子ども向け環境教育プログラムCHIBA-ZOOTUBEプロジェクトの継続実施

協定の「環境教育活動」の柱では、千葉市・イオン環境財団・ちばアントレプレナーシップ教育コンソーシアム(Seedlings of Chiba)の協力による「CHIBA-ZOOTUBEプロジェクト」が継続実施されている。市内在住・在学の小学4年生から中学3年生を対象に、参加者が動物公園の広報担当役となって動画を制作する起業家精神育成プログラムで、2023年10月開催回では動物福祉をテーマに定員16名が4人チームに分かれて動画を制作し、完成した4作品を市公式YouTubeで公開した。2025年10月開催回では、同年3月にリニューアルされた展示「生命の森熱帯雨林」を題材に、消えつつある生態系や地球環境を題材とした動画制作に18名が取り組んだ。 (参考:千葉市動物公園で子どもたちが動物福祉考え動画作成 ユーチューブにもアップ|千葉経済新聞千葉市動物公園にて環境をテーマに「CHIBA ZOOTUBEプロジェクト」を開催|公益財団法人イオン環境財団のプレスリリースCHIBA-ZOOTUBEプロジェクトイベントレポート|Seedlings of Chiba

この事例の特徴

「調査→計画策定→実行」を専門機関委託で科学的に接続した点

多くの公民連携の環境保全事業が植樹やボランティア活動の実施そのものを目的化しがちな中、本事例はまず外部の専門団体(RGEEA)に生物調査を委託し、9カ月間・7,743匹の捕獲データという定量的な根拠を積み上げたうえで再整備計画とゾーニングを設計している。行政と企業財団の協定という「枠組み」だけでなく、専門家による「中身」の設計を伴っている点が、単なる協賛型の環境活動との違いである。 (参考:千葉市動物公園大池生物調査及び再整備計画|千葉市

動物園という立地を生かした「域内保全と域外保全の中間」の発想

有識者評価では、大池を「千葉市にかつて生息した地元の生きものの保全地」として位置づけ、絶滅危惧種を野生に戻す前段階として動物園内で展示・保全する「域内保全と域外保全の中間」の考え方が示されている。動物福祉のために飼育動物を展示する従来の動物園機能に加え、園内の自然地を地域の希少種の受け皿とする発想は、動物園という施設特性を活かした独自のアプローチといえる。 (参考:千葉市動物公園大池生物調査及び再整備計画|千葉市

「守るエリア」と「使うエリア」を明確に区分するゾーニング設計

保全か公開かの二者択一ではなく、大池周辺をレクリエーションゾーン・バッファゾーン・生物多様性保護ゾーンの3層に分け、それぞれに異なる管理方針(開放、緩衝、不可侵)を割り当てている点が特徴的である。特に生物多様性保護ゾーンについては、希少なクモ類(キシノウエトタテグモなど)の生息地が一度破壊されると個体群が壊滅的な打撃を受けるという専門家の指摘を踏まえ、ガイドツアーで立ち入る範囲を舗装路の終点までに限定するなど、「知ってもらうこと」と「守り抜くこと」を両立させる工夫がなされている。 (参考:千葉市動物公園大池生物調査及び再整備計画|千葉市

環境教育と起業家教育を組み合わせたCHIBA-ZOOTUBEプロジェクト

CHIBA-ZOOTUBEプロジェクトは、子どもたちに動画制作というデジタルスキルと起業家精神を育む既存の教育プログラムを、生物多様性協定の「環境教育活動」の柱に組み込むかたちで継続させている。環境教育を座学的な講演にとどめず、子どもが当事者として課題を発見し発信する体験型プログラムに接続した点は、環境教育とキャリア教育を別々に捉えがちな一般的な取り組みとは一線を画す。 (参考:千葉市動物公園にて環境をテーマに「CHIBA ZOOTUBEプロジェクト」を開催|公益財団法人イオン環境財団のプレスリリース

調査時点の成果

大池内部の水生生物調査:12種7,743匹を捕獲、在来種の優占を確認

2023年7月から2024年3月にかけての水生生物調査では、大池内部で12種(交雑種を含む)、総計7,743匹の生物が捕獲された。在来種のモツゴが3,319匹で最も多く、以下スジエビ(在来種、1,833匹)、アメリカザリガニ(外来種、1,734匹)、クロダハゼ(在来種、649匹)の順に多く、この上位4種で捕獲数全体の大半を占めた。2015年の前回調査と比べると、モクズガニ・ヘラブナ・アズマヒキガエルの3種が新たに確認された一方、在来種であるニホンイシガメは今回の調査でも見つからず、外来種のクサガメと在来種イシガメとの交雑個体が1体見つかっている。 (参考:千葉市動物公園大池生物調査及び再整備計画|千葉市

土壌・クモ類調査:立入禁止ゾーンで指標生物32種を全種確認

大池周辺の立入禁止ゾーンで実施した土壌動物調査では、指標生物32種がすべて見つかり、土壌環境が非常に良好な状態にあることがうかがえた。クモ類調査では、環境省が準絶滅危惧種、千葉県が要保護生物、千葉市が最重要保護生物にそれぞれ指定するキシノウエトタテグモについて、3カ所で生息が確かめられたほか、千葉県のレッドデータブックに載るシッチコモリグモ、新種記載間もない微小種で千葉県内では手賀沼に次いで2例目の記録となるムナアカナルコグモなど、希少なクモ類が複数確認された。野鳥調査では2024年1月に樹上でオオタカの幼鳥が見つかり、餌をとる様子や休む姿、食べ跡が確認されている。 (参考:千葉市動物公園大池生物調査及び再整備計画|千葉市

CHIBA-ZOOTUBEプロジェクトと園内清掃の実績

2023年10月開催のCHIBA-ZOOTUBEプロジェクトでは4チームが動画を制作し、完成した4作品を市公式YouTubeで公開、うち1チームが「千葉市動物公園賞」に選ばれた。2025年10月開催回には18名が参加し、生物多様性をテーマにした動画制作を行った。また千葉市公式サイトによれば、2026年7月時点で正門エリアへのサクラ植樹、大池周辺の清掃活動が計9回実施されており、協定に基づく活動は当初の3年間という期間を超えて継続している。 (参考:千葉市動物公園で子どもたちが動物福祉考え動画作成 ユーチューブにもアップ|千葉経済新聞CHIBA-ZOOTUBEプロジェクトイベントレポート|Seedlings of Chiba千葉市動物公園 公益財団法人イオン環境財団と生物多様性に関する事業を推進するための連携協定を締結しました!|千葉市

他地域への示唆

企業財団との協定を「資金提供」で終わらせず「調査・計画・実行」の伴走型にする

多くの自治体と企業・財団の環境保全協定は、植樹本数や清掃回数といったアウトプット指標にとどまりやすい。本事例は、専門団体への調査委託という初期投資を経て科学的根拠のある再整備計画を策定し、その計画に沿って植樹・教育・ボランティアを配置し直している。協定を締結すること自体を目的化せず、その後の「調査に基づく計画策定」という工程を組み込めるかどうかが、他地域が企業・財団との連携協定を設計する際の再現性のある論点になる。

見過ごされた施設内の一角を保全資源として再評価する視点

大池は、来園者の大半がその存在を知らないまま9年もの間放置されてきた場所である。動物園に限らず、公園・学校・公共施設の敷地内には、管理上「手つかず」になっている緑地や水辺が少なからず存在する。こうした場所を「使われていない空白地」ではなく「人の手が入らなかったからこそ保全されてきた生物多様性の拠点」として再評価する視点は、動物園という特殊な施設に限らず、公共施設全般のグリーンインフラ整備に応用できる。

保全エリアの公開度合いを段階的に設計する

生物多様性保護ゾーンを完全に非公開にするのではなく、ガイドツアーで舗装路の終点までに限定して立ち入りを許可するという段階的な公開設計は、希少種の生息環境を破壊するリスクと、市民の理解・支持を得るために「見せる」必要性のトレードオフに対する現実的な解法である。保全と公開活用の二項対立に陥りがちな他地域の里山・水辺保全事業においても、ゾーンごとに異なる公開レベルを設定する発想は参考になる。

専門家評価を「非公開の内部資料」ではなく計画書に併記して公表する

再整備計画書には、外部有識者2名の評価コメントを匿名化せずそのまま収録し、賛意だけでなく、アメリカザリガニについては根絶ではなく低密度管理を目指すべきだという指摘や、野生の猛禽類が飼育動物を襲うリスクへの備えが必要だという指摘など、注意点も含めて公開している。行政計画にありがちな「総じて良好」という結論ありきの記述とは一線を画すこうした情報公開のあり方は、計画の実効性を担保する仕組みとして他地域の環境保全計画でも応用可能である。

参照元


2026年8月時点の調査内容に基づいて作成

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