
浜田山駅南口整備事業
杉並区が京王井の頭線浜田山駅の南口開設をめざし、駅南側の民間建物を賃借して地下連絡通路を整備する計画を進めたが、賃料条件で合意できず中断。3年の停滞を経て、踏切の実態調査と全面的な情報公開によって事業の再起動を図っている合意形成とガバナンスの事例。
京王井の頭線浜田山駅(東京都杉並区)は、改札が地下にあるにもかかわらず地上の出入口が線路北側の1か所しかない。南側から駅を使う人も、線路をまたいで南北を行き来する人も、駅のすぐ脇にある踏切を渡るしかない。その踏切が朝夕は「開かずの踏切」となる。区内にある井の頭線の地上駅5駅(久我山・富士見ヶ丘・浜田山・西永福・永福町)のうち、南北自由通路が未整備なのは浜田山駅だけである。2025年度の1日平均乗降人員は28,139人。 (参考:浜田山駅南口の整備に向けた取組|杉並区、駅別 一日平均乗降人員|京王電鉄)
南口開設を求める請願が区議会で採択されたのは2005年(平成17年)。長く動かなかったこの課題は、2021年に具体的な計画になった。駅南側の土地所有者が建てる民間建物の地下1階と1階を杉並区が賃借し、その中にエレベーターと、駅の地下改札に直結する連絡通路を整備するという構想である。区は京王電鉄と協定を結び、設計費を予算化し、2024年度の完成をめざすと対外的に発信した。 (参考:浜田山駅南口整備に向けたこれまでの経過|杉並区)
しかし賃貸借の条件が折り合わないまま建物の竣工が近づき、区は2023年1月に賃借を断念した。建物は2023年3月に完成し、駅とつなぐことを前提に設計されたまま使われずに残っている。その後の約3年間、区は住民から要望があったときだけ小規模な説明会を開き、事業予算は計上されなかった。 (参考:浜田山駅南口整備に向けたこれまでの経過|杉並区)
流れが変わったのは2025年後半である。区主催の報告会に171人が集まり、区は情報公開の方針を転換した。区職員自身が踏切に立って横断実態を計測し、2026年3月に調査報告書を公表。2026年度には断念後はじめて事業予算を計上し、不動産鑑定士による賃料の第三者評価に着手した。本稿は、公共施設を民有建物の賃借で整備しようとした事業がどこで詰まり、何によって再起動が図られているのかを追う。 (参考:浜田山駅南口整備事業に関する現況報告会 議事録|杉並区、浜田山駅南口整備に関する区議会でのやりとり|杉並区)
浜田山駅の東西には、浜田山1号踏切と西永福5号踏切がある。国土交通省は、電車の運行本数が多い時間帯において「遮断時間が1時間あたり40分以上となる踏切」を「開かずの踏切」と定義している。2005年の区議会での請願審査では、当時の実測値として西側44分、東側46分という数字が示されていた。20年前にすでに基準を超えていたことになる。 (参考:浜田山駅南口整備に関する区議会でのやりとり|杉並区)
浜田山駅の構造上の問題は、単に出入口が1か所しかないことではない。改札が地下にあるため、南側から来た利用者は「踏切を渡って北側に出てから、地下に降りて改札を通る」という遠回りを強いられる。北口ビルと地下通路、そしてホームへのエレベーターは1997年の駅舎改築時に整備済みで、駅そのもののバリアフリーは完結している。足りないのは、線路の南側と地下改札をつなぐ経路だけである。 (参考:浜田山駅南口の整備に向けた取組|杉並区)
区が事業主体となる理由は、二つの制度に由来する。第一に、バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が鉄道事業者に義務づけるのは駅出入口からホームまでの経路整備であり、浜田山駅ではこれが1997年の改築時にすでに完了している。むしろ京王電鉄は、バリアフリー法の施行を待たずに前倒しでエレベーターを設置していた。第二に、国土交通省が2009年(平成21年)に策定した「自由通路の整備及び管理に関する要綱」では、踏切対策や市街地の分断解消といったまちづくり目的で設ける自由通路について、国・都道府県・市区町村(都市基盤事業者)が整備主体になると定めている。同要綱の費用負担ルールを整理した資料では、実態として「地方公共団体が整備費の大半を負担しているケースが多い」ことも課題として挙げられていた。 (参考:自由通路の整備及び管理に関する要綱について|国土交通省、自由通路の整備及び管理に関する要綱(費用負担ルールの策定について))
つまり、駅の安全性を高める整備でありながら、鉄道事業者には法的な追加義務がなく、費用は区が負担する構図になる。京王電鉄は区に対し、会社の方針として土地を借りて出入口を整備することはしないと説明しており、土地を取得できる場合には一部協力の可能性があるという立場を示している。報告会では住民から「受益者である鉄道事業者がなぜ負担しないのか」「都内の地下鉄の出入口はほとんどが借り物ではないか」という異論が繰り返し出された。 (参考:浜田山駅南口整備事業に関する現況報告会 議事録)
2005年の請願採択後も、区は京王電鉄や関係地権者との協議を重ねたものの、事業として動き出す段階には進めなかった。2010年の予算特別委員会では「平成17年から隣接地の土地所有者と用地交渉を重ねたが、合意には至っていない」「条件面で折り合いがつかない」と答弁されている。用地が確保できないことが、20年にわたって事業を止めてきた最大の要因だった。 (参考:浜田山駅南口整備に関する区議会でのやりとり|杉並区)
2019年8月、京王電鉄から区に不動産に関する情報提供があったことが転機となった。同年12月、区は経営会議で南口整備の方針を了承し、京王電鉄と覚書を締結。当初は用地を購入する意向を不動産事業者に伝えていた。2021年1月に区が地権者へ用地取得の意思を伝えたところ、地権者からは「自身が建てる建物の一部をテナントとして区に貸すことはできる」との回答があった。ここで、事業は「取得」から「賃借」へと方式が切り替わる。 (参考:浜田山駅南口整備に向けたこれまでの経過|杉並区)
同年7月に地権者から賃借条件が提示され、9月に区が賃借して整備する意向を伝達。9月の経営会議で事業開始が了承され、11月には地権者側の法人(地権者が代表)との間で覚書を交わし、区議会にも報告のうえ地下連絡通路の設計費を補正予算で確保した。ただし、この時点では賃料などの具体的条件は詰められていない。区は後の議会答弁で「大まかな賃借期間や区が賃借する範囲について互いに協議していた」段階であり、契約に関する書面は交わしていなかったと説明している。 (参考:浜田山駅南口整備に向けたこれまでの経過|杉並区、浜田山駅南口整備に関する区議会でのやりとり|杉並区)
2022年2月、区と地権者の間で契約に関する協議が始まり、同月に建物の建設工事が着手された。3月には京王電鉄と基本協定書、4月に設計等に関する協定書を締結し、区議会ではエレベーターと賃借部内装の設計費が予算化された。区の対外的な発信は「南口整備の実施」として進み、地域では開設が決まったものと受け止められた。 (参考:浜田山駅南口整備に向けたこれまでの経過|杉並区)
一方、賃貸借契約の実務協議は同年3月から8月にかけて地権者の代理人弁護士と複数回行われたが、条件は詰まらなかった。11月には代理人弁護士から「12月中に建物が完成予定であり、地権者はテナント募集を開始したい」との意思が区に示される。12月に最終的な条件提示がなされたが折り合わず、2023年1月、区は賃借を断念する旨を代理人弁護士に伝え、経営会議で事業の中断が了承された。 (参考:浜田山駅南口整備に向けたこれまでの経過|杉並区)
区が当時示した賃料の考え方は、近隣の同規模建物の賃料相場と、区が他に賃借している施設の実績を参照して内部で試算したものだった。不動産鑑定士などの外部専門家は関与していない。この点は後に、住民と議会の双方から意思決定プロセスの問題として追及されることになる。 (参考:浜田山駅南口整備事業に関する現況報告会 議事録)
2023年2月、区は都市環境委員会・総務財政委員会に「再検討について」を報告し、未実施だった設計業務を取りやめる方針と、京王電鉄との基本協定書を解消する方向で協議することを明らかにした。設計費の一部は減額補正された。同年3月に建物は完成、4月に基本協定書が解消された。 (参考:京王電鉄井の頭線浜田山駅南口の開設に向けた取組の再検討について(都市環境委員会資料)、浜田山駅南口開設を再検討へ|シブきち)
この後の地域説明は、いずれも住民側からの要望を受けた個別対応にとどまった。2023年6月29日に浜田山町会へ約15人、2024年5月7日に駅南側住民へ約15人、2025年7月28日に駅周辺住民へ約54人という規模である。2025年7月の説明会では、区は「南口の開設に向けた取組自体を中断したわけではない」としつつ、交渉途中の内容は公表できないと繰り返した。「契約できるよう他自治体の事例を調べたか」という質問には「他の自治体の事例は調べておりません」と答えている。事業予算はこの間、計上されていない。 (参考:浜田山駅周辺地域住民への説明会 議事要旨、浜田山駅南口整備に向けたこれまでの経過|杉並区)
2025年11月7日、区が初めて自ら広報して開催した「現況報告会」には171人(東京都議会議員2人、杉並区議会議員6人を含む)が参加した。金曜夜の開催にもかかわらず椅子が足りなくなる規模である。住民側は事前に質問リストを作成して持ち込み、議論は約2時間に及んだ。 (参考:浜田山駅南口整備事業に関する現況報告会 議事録)
論点は大きく三つに分かれた。第一に、賃料が「高い」と判断した根拠。参加者からは、賃借した場合の事業全体の費用を現在価値で3.5億〜4.4億円、用地取得して整備する場合を5.9億円以上とする独自試算が示され、「現在の建物を借りるのが最も安いはずだ」との指摘がなされた。第二に、外部専門家を入れずに内部算定だけで断念を決めた意思決定プロセスの妥当性。第三に、地権者との信頼関係をどう回復するかである。 (参考:浜田山駅南口整備事業に関する現況報告会 議事録、浜田山駅南口整備事業に関する現況報告会 配布資料)
区はこの場で、賃料が折り合わなかったことが断念の大きな要因であったことを認め、年度内に不動産鑑定を実施すること、現地調査を実施すること、議事録をホームページで公開すること、担当課長が直接京王電鉄に出向いて協議することを約束した。閉会にあたり担当部長は「交渉事で相手があるからということを、区の言い訳のために使いがちであった」「相手がいることだからというところにこれまで甘えがあった」と述べている。 (参考:浜田山駅南口整備事業に関する現況報告会 議事録、浜田山駅南口整備事業に関する現況報告会 配布資料)
報告会の直後、区は職員による踏切実態調査を実施した。3人1組で北側・南側の遮断機脇と統括役に分かれ、踏切内へ進入した人数、踏切前の待ち人数を数えつつ、警報音が鳴り始めた・鳴り終わった時刻、遮断機が閉まり始めた時刻までを秒刻みで記録する方式である。調査日は浜田山1号踏切が2025年11月26日(昼)・27日(夕)・28日(朝)、西永福5号踏切が12月2日(昼・夕)・3日(朝)。時間帯は平日の通過本数が最大となる1時間を、京王電鉄の時刻表から算出して選んでいる。 (参考:京王電鉄井の頭線浜田山駅踏切道の横断に関する実態調査報告書)
得られたデータは、それまで定性的にしか語られてこなかった「危険」を数値に置き換えた。詳細は次章で述べる。調査報告書は2026年3月に公表され、区は同時に踏切利用時の留意点も掲載した。 (参考:京王電鉄井の頭線浜田山駅踏切道の横断に関する実態調査報告書)
2025年12月10日、区は京王電鉄と意見交換を実施。2026年に入ると、区は代理人弁護士を通じて文書で、不動産鑑定評価を行うこと、および賃貸借条件の協議を再開できるかどうかを正式に照会した。2月中旬に代理人弁護士から「依頼者に意向を確認している」との回答があったものの、2026年3月時点で地権者の具体的な意向は示されていない。 (参考:浜田山駅南口整備に関する区議会でのやりとり|杉並区)
2026年度予算では、断念後はじめて浜田山駅周辺の環境改善として790万円が計上された。内訳の中心は不動産鑑定評価で、ほかに踏切道の現状調査、年2回程度の報告会開催、情報発信の経費が含まれる。同年6月に不動産鑑定士との価格等調査業務の契約を締結し、7月15日には京王電鉄と再び意見交換を実施。7月17日時点で鑑定調査は進行中であり、区は結果を踏まえて賃貸借条件を再検討し、地権者との協議再開をめざすとしている。並行して、協議の状況に応じて代替案の検討も進めるとしている。 (参考:浜田山駅南口整備に向けたこれまでの経過|杉並区、浜田山駅南口整備に関する区議会でのやりとり|杉並区)
1. 「借りる」方式が補助制度と噛み合わない
報告会で担当部長は、費用構造の非対称性を明言している。土地・建物を借りるフローの支出は国等の補助金の対象に基本的にならず全額区負担となる一方、区が買収した土地や区有地で整備すれば国庫補助が入りやすい。初期投資は賃借のほうが小さくても、補助を織り込んだ実質負担では逆転しうる。用地が取得できないから賃借に切り替えたはずが、その切り替えによって財源調達の選択肢を失っていた。区が代替案として近隣の区立公園からトンネルを掘る案を検討対象に挙げているのも、この構造が背景にある。住民からは「公園から掘れば二桁億円規模になる」という反論が出ており、区自身も莫大な費用と時間を要すると認めている。 (参考:浜田山駅南口整備事業に関する現況報告会 議事録、浜田山駅南口整備に関する区議会でのやりとり|杉並区)
2. 早くバリアフリー化した駅ほど、後の追加整備で負担者がいなくなる
京王電鉄は1997年の駅舎改築時、バリアフリー法の施行を待たずに前倒しでエレベーターを設置した。当時としては先進的な対応である。しかしその結果、鉄道事業者に義務づけられた整備は「完了済み」となり、その後に必要性が高まった南側出入口については法的な整備義務が及ばない。国交省要綱の枠組みでも、まちづくりの一環としての自由通路整備は自治体が主体となる。先行してバリアフリーを達成した駅ほど、後年の追加整備で鉄道事業者に費用分担を求める根拠を失う――この逆説は、他の沿線でも同じ形で現れうる。 (参考:浜田山駅南口整備に関する区議会でのやりとり|杉並区、自由通路の整備及び管理に関する要綱について|国土交通省)
3. 合意形成と対外発信の順序が逆転した
覚書の締結、京王電鉄との協定締結、設計費の予算化、そして「2024年度完成をめざす」という対外発信は、いずれも賃料条件の実務協議に入る前に行われた。地権者は駅と接続することを前提に自己資金で建物を建て、地域は開設を既定事実と受け止めた。条件協議はその後に始まり、まとまらなかった。区長は2025年11月の議会答弁で、「賃料等の具体的な条件について交渉を行う前の段階から、事実上、約束と受け取られるような対外的発信が行われたことは、行政の責任ある姿勢として不適切であった」「行政手続を軽視し、政治的判断が先行した結果、地域の皆様に過度な期待を抱かせ、その後の不信感や失望、怒りを生む要因をつくった」と述べ、意思決定プロセスの透明化と説明責任を最優先に取り組むとしている。 (参考:浜田山駅南口整備に関する区議会でのやりとり|杉並区)
4. 価格の妥当性を内部算定だけで決め、3年後に検証し直すことになった
賃料の妥当性は、近隣相場と区の他施設の賃借実績を参照した内部試算で判断され、断念という結論に直結した。住民からは「3億〜6億円規模の事業で、不動産鑑定士など第三者を入れずに撤退を決めるのはガバナンスの欠如ではないか」という指摘が出た。区はこの指摘を受け入れて鑑定評価の実施を約束し、2026年度予算に計上した。断念の判断そのものではなく、判断の裏づけ手続きが争点になり、結果として3年分の時間を失った形である。 (参考:浜田山駅南口整備事業に関する現況報告会 議事録)
5. 「相手がある交渉だから話せない」が不信を増幅させた
区は一貫して、交渉途中の内容は地権者との関係上公表できないとの立場をとった。この姿勢自体には合理性がある一方、断念の理由が説明されない状態が3年続いたことで、住民の間には「区長が交代したから止まった」という理解が広がり、区はその都度否定に追われた。担当部長が「相手がいることだからというところに甘えがあった」と反省を述べたのは、非開示の判断そのものではなく、非開示を理由に説明努力を止めたことに対してである。 (参考:浜田山駅南口整備事業に関する現況報告会 議事録)
南口はまだ開設されておらず、地権者との協議も再開していない。この事例で現時点に確認できるのは、停滞していた事業の前提条件を組み替える動きが実際に生じたことである。
踏切の危険が定量データになった
2025年11月〜12月の実態調査は、朝の時間帯の状況を数値で示した。遮断率(計測時間に占める遮断時間の割合)は浜田山1号踏切が83%、西永福5号踏切が78%。国交省の「開かずの踏切」基準を1時間あたり40分=66.7%として比較すると、両踏切とも朝は基準を大きく上回る。1タームあたりの平均通行可能時間は浜田山1号が29秒、西永福5号が36秒で、最短では両踏切とも4秒。最長遮断時間は浜田山1号の朝で5分42秒に達した。 (参考:京王電鉄井の頭線浜田山駅踏切道の横断に関する実態調査報告書)
「渡り切れない」が構造的な問題であることが示された
報告書は、踏切の3メートル手前を出発点とし、横断に必要な歩行距離を16メートルと仮定したうえで、年齢層別の歩行速度から所要時間を算出した。成人一般(1.33m/秒)で12秒程度、65〜74歳平均(0.98m/秒)で16秒程度、85歳以上平均(0.67m/秒)で24秒程度である。これを通行可能時間と突き合わせると、85歳以上の歩行速度では、朝の時間帯に浜田山1号で23ターム中11回、西永福5号で22ターム中10回、渡り始めても途中で警報が鳴り出す計算になる。約半数である。成人一般の速度でも西永福5号の朝は22ターム中8回が該当した。高齢者だけの問題ではないことが数値で裏づけられた。 (参考:京王電鉄井の頭線浜田山駅踏切道の横断に関する実態調査報告書)
危険行動の実数も記録された
3時間帯の合計横断人数は浜田山1号863人、西永福5号1,196人。このうち警報音の鳴動開始後に踏切内へ進入した人数は、西永福5号の朝が55人で横断者の17.1%、浜田山1号の夕が29人で11.6%に上る。降りた遮断機を押し上げて踏切の外へ出た人は西永福5号の朝で4人、浜田山1号の朝で2人。現場では、自転車が一時停止せずに進入する、10メートル以上手前から走り抜ける、イヤホンを着けてスマートフォンを見ながら渡る、ベビーカーの車輪がレールのくぼみに取られる、といった状況も確認されている。区はこの結果を「南口整備による安全性・利便性向上の必要性を改めて認識した」と評価すると同時に、利用者側の交通ルール・マナーの理解を促す対策も必要だと整理した。なお京王電鉄は踏切警報灯の両面式化、高機能型障害物検知装置の設置などの対策を講じており、直近10年間、浜田山駅に隣接する2つの踏切では列車との衝突・接触事故は起きていない。 (参考:京王電鉄井の頭線浜田山駅踏切道の横断に関する実態調査報告書、浜田山駅南口整備事業に関する現況報告会 配布資料)
情報公開の水準が段階的に変わった
区は2025年11月から12月にかけて公式サイトに南口整備の専用ページを新設し、これまでの経過、報告会・説明会の議事録と配布資料、2005年以降の区議会でのやりとりを抜粋した資料、踏切調査報告書と調査データ、意見フォームを公開した。2026年3月時点で専用ページのアクセスは3,834件、意見フォームには約40件のコメントが寄せられ、内容は早期開設の要望、地権者との協議再開の要請、代替地の検討要望などだった。説明会の参加者数も、要望ベースの約15人・約15人・約54人から、区主催の171人へと段階的に広がっている。 (参考:浜田山駅南口の整備に向けた取組|杉並区、浜田山駅南口整備に関する区議会でのやりとり|杉並区)
3年ぶりに予算がついた
2026年度予算で790万円が計上された。断念後に本事業へ予算が計上されたのはこれが初めてである。中心は不動産鑑定評価で、ほかに踏切道の現状調査、年2回程度の報告会開催、情報発信の経費が含まれる。2026年6月に鑑定業務の契約が締結され、7月時点で調査が進行中である。 (参考:浜田山駅南口整備に関する区議会でのやりとり|杉並区、浜田山駅南口整備に向けたこれまでの経過|杉並区)
未達の部分
地権者からは、鑑定評価の実施と協議再開について具体的な意向がまだ示されていない。区は鑑定に地権者の了承が必要との認識を示しており、協議の前提となる意思表示が得られない限り区単独で事業を進めることには限界があるとしている。開設時期の見通しは示されていない。踏切の暫定的な安全対策についても、区は京王電鉄に住民意見を共有し連携して検討するとの段階にとどまる。 (参考:浜田山駅南口整備に関する区議会でのやりとり|杉並区)
1. 用地方式の変更は、財源スキームの変更でもある
「取得できないから借りる」という判断は、現場では自然な代替案に見える。しかし賃借は多くの場合フロー支出となり、国庫補助の対象になりにくい。事業費の総額が小さくなっても、一般財源の負担額は大きくなりうる。方式を切り替える段階で、取得案・賃借案それぞれについて補助制度を織り込んだ実質負担額を比較しておくことが、後の「高いか安いか」の議論を空転させないための前提になる。浜田山の事例では、この比較が公開資料の形で示されたのは断念から3年後の議論の中でだった。
2. 対外発信と条件合意の順序を設計する
予算計上や協定締結は、地域にとっては「決定」のシグナルになる。相手方の私財投資を伴う事業では、条件合意前の発信が、行政・地権者・住民の三者すべてに損失を生む。地権者は駅接続を前提とした建物を抱え、住民は期待を裏切られ、行政は信頼を失う。「どの段階で何を公表するか」をあらかじめ内部ルールとして定め、条件未確定であることを明示したうえで発信する運用が要る。区長自身が「行政手続を軽視し、政治的判断が先行した」と総括している点は、他自治体にとっても参照価値がある。
3. 撤退判断こそ第三者評価を挟む
事業を「進める」ときには外部評価を挟むのに、「やめる」ときは内部判断で済ませてしまう、という非対称は珍しくない。浜田山の事例では、賃料の妥当性を内部試算のみで判断したことが、断念の実質的な理由でありながら、その判断の根拠が説明できないという状態を生んだ。撤退の意思決定にも、金額規模に応じた第三者の評価を組み込んでおくことが、事後の説明責任と再交渉の余地の双方を守る。
4. 「危険」は数えなければ動かない
区は20年にわたり踏切の危険性を認識していると答弁してきたが、体系的な実態調査を行ったのは2025年末が初めてだった。調査によって、遮断率83%、平均通行可能時間29秒、85歳以上の歩行速度では朝の約半数のタームで渡り切れない、といった数値が得られ、事業の必要性を対外的に説明できる形になった。定量データは、鉄道事業者との協議、庁内の予算獲得、住民との認識共有のいずれにも効く共通言語になる。3人1組で1時間ずつ、計6回の職員調査という規模で実施できている点も、他地域が模倣しやすい水準である。
5. 停滞事業の再起動は、情報の全面公開から始めうる
浜田山では、専用ページの新設と議事録・区議会答弁の全文公開が、実態調査・鑑定評価・予算計上という具体的な動きに先行した。公開によって論点が共有されると、住民が独自試算や代替ルート案を持ち込む形で議論の材料が増え、行政側も「相手がある交渉だから」という説明で止まれなくなる。対立的なやりとりを含む議事録をそのまま公開したことは、短期的には行政にとって不利に見えるが、停滞の理由を可視化して次の一手を検討可能にするという点で機能している。ただし、公開が実行を伴わなければ「説明会の繰り返し」に終わることも、住民から繰り返し指摘されている。
6. 相手が動かない場合の代替案を、同時に温めておく
この事業の最大の制約は、地権者が協議のテーブルに戻るかどうかが区の統制外にあることである。区は区有地の活用を含む別ルートの検討を並行して進めるとしているが、報告会では「代替案の検討は断念から3年後に始まった」ことへの批判が出た。相手方の意思に依存する事業では、本命案の交渉と並行して代替案の概算検討を進め、一定期間で切り替える判断基準を先に決めておくことが、交渉が止まった際の時間損失を減らす。
2026年08月時点の調査内容に基づいて作成
この記事は公開情報に基づき、AIを用いた詳細調査により作成されました。記事内容への修正依頼、お問合せ等は以下までお寄せください。
問い合わせ:support@groove-designs.com
よくあるご質問(FAQ)もあわせてご確認ください。
#
総合計画
#
まちづくり指針
#
エリアビジョン
#
景観計画
#
緑の基本計画
#
公共空間活用
#
ウォーカブル
#
公園活用
#
防災・減災
#
空き家活用
#
エリアプラットフォーム
#
公民連携プラットフォーム
#
公民連携
#
地域コミュニティ
#
地域交流拠点
#
多文化共生
#
子育て支援
#
文化芸術
#
自動運転バス
#
モビリティマネジメント
#
モビリティハブ
#
関係人口
#
移住促進
#
探究学習
#
グリーンインフラ
#
生物多様性
#
参加型予算
#
都市整備
#
まちなか
#
駅前広場
#
協働のまちづくり
#
リノベーションまちづくり
#
フューチャーセンター
#
スマートシティ
#
AI
#
リビングラボ
#
空きスペース活用
#
居場所づくり
#
子ども食堂
#
沿線まちづくり
#
健康
#
社会教育
#
持続可能な都市
#
計画策定
#
まちづくり
#
コミュニティ形成
#
ワークショップ
#
社会実験
#
市民参加
#
子ども・若者
#
子育て世代
#
シニア