
いきいきシニアポイント
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
京都市が65歳以上の市民を対象に実施する健康ポイント事業。健診・通いの場参加・地域活動・食生活改善など8分野の健康づくり活動を紙の手帳に自己申告で記録し、一定ポイントで抽選に応募できる仕組みを通じて、フレイル・オーラルフレイル予防と社会参加を後押しする。
京都市は、市内在住の65歳以上の高齢者(および「通いの場」で活動を支援する40歳以上の人)を対象に、「いきいきシニアポイント」という健康ポイント事業を実施している。参加者は「いきいきシニアポイント手帳」に、健診受診・通いの場への参加・地域活動・ボランティア・外出・食生活の改善など、日々の健康づくりの実践を自己申告で記録し、50ポイント以上貯まると抽選でプレゼントに応募できる仕組みである。(参考:京都市:令和8年度健康ポイント事業「いきいきシニアポイント」の実施)
事業の狙いは、フレイル(加齢に伴う心身の虚弱)およびオーラルフレイルの予防と、高齢者の社会参加の促進にある。健康行動を「見える化」し、達成感を伴う形で習慣化を後押しする点に特徴があり、令和4年度(2022年度)から実施され、令和8年度(2026年度)まで毎年度継続している。(参考:京都市:「いきいきシニアポイント」について)
京都市では、令和5年(2023年)9月時点で高齢者数が約41万人、高齢化率は28.5%に達しており、市民のおよそ3割近くを高齢者が占める。(参考:京都市統計解析No.142「京都市の高齢者人口」)
京都市は平成29年度(2017年度)から介護予防・日常生活支援総合事業を開始し、主に要支援者を対象とした支援を充実させてきた。しかし、単発の運動プログラムでは効果が一時的にとどまりやすく、プログラム提供後も高齢者自身が元気な状態を維持できる仕組みまで作らなければ、地域の元気力・活力の維持向上にはつながらないという課題があった。行政が一方的にプログラムを提供し、高齢者側が受け取るだけの一方通行の関係になりがちだったことも課題として挙げられている。(参考:NEC wisdom:地域の元気力につながる「健康長寿」の実現へ ~京都市とNECの「フレイル」への挑戦~)
平成30年(2018年)3月には「健康長寿・笑顔のまち・京都推進プラン」を策定し、市内12か所の地域介護予防推進センターを拠点に、運動・栄養口腔・社会参加を柱とするフレイル対策に本格的に取り組み始めた。同年度には推進センターの介護予防教室等が年間2万5000回開催され、延べ28万人が参加する規模にまで拡大したが、事業規模が大きい分、実施回数や参加延べ人数といった量的な実績は追えても、体力測定などで一人ひとりの変化を客観的に検証するのは難しく、推進センターごとの取り組みを比べたり、参加者の状況を関係者間で共有したりすることも容易ではなかった。(参考:NEC wisdom:地域の元気力につながる「健康長寿」の実現へ ~京都市とNECの「フレイル」への挑戦~、NEC wisdom:京都市にみる「フレイル予防」の未来とは?)
この課題に対応するため、京都市は平成31年(2019年)からNECとの官民連携により、「通いの場」に着目したデータ活用型のフレイル対策モデル事業に着手した。専門職が伴走しながら体力測定データを継続的に収集する取り組みは、令和3年度には既存の介護予防教室にも試行的に広がり、体力測定データが約4000人分集まり、参加者がどの年代・性別に多いかという実態のほか、握力測定の結果から2割ほどがフレイル傾向にあると見込まれることも見えてきた。(参考:NEC wisdom:京都市にみる「フレイル予防」の未来とは?)
もっとも、こうした専門職伴走型のデータ活用は、体力測定や継続的な記録を伴う分だけ運営側の手間がかかり、対象もすでに通いの場や介護予防教室に参加している層が中心となる。フレイル・オーラルフレイル対策を「運動」「栄養・口腔」「社会参加」の3本柱でバランスよく進めるには、こうした専門的支援の手前で、より多くの高齢者に日々の健康行動そのものを促す、簡易で参加のハードルが低い仕組みも合わせて必要になる。いきいきシニアポイントは、この裾野を広げる役割を担う施策として、令和4年度から実施されている。(参考:京都市:フレイル対策で健康長寿)
1. 8分野のポイント制度設計
現行の制度(令和8年度実施分)では、(1)健診ポイント(各種健診・検診・ワクチン接種)、(2)通いの場ポイント、(3)地域活動ポイント(自治会・町内会・老人クラブ等の参加)、(4)ボランティアポイント、(5)お出かけポイント(家族・友人との外出)、(6)食育ポイント(バランスの良い食事・減塩の実践)、(7)毎日ポイント(自己設定の健康目標の実践)、(8)プラスせんぽポイント、の8種類の活動にポイントが設定されている。(参考:京都市:令和8年度健康ポイント事業「いきいきシニアポイント」の実施)
プラスせんぽポイントは、京都市と「健康長寿のまち・京都市民会議」が別途進める、「プラス1,000歩」を合言葉にした市民ぐるみのウォーキング運動と連動したポイント区分であり、健診・通いの場・地域活動・ウォーキング運動という、京都市がすでに個別に展開していた複数の健康施策を1冊の手帳の中に集約する設計になっている。(参考:京都市:令和8年度健康ポイント事業「いきいきシニアポイント」の実施、京都市:伸ばそう健康寿命~プラスせんぽにチャレンジ!!~)
2. 年度サイクルでの手帳配布と自己申告記録
毎年度5月頃、各区役所・支所(健康長寿推進課)、老人福祉センター、市内12か所の地域介護予防推進センター等で、当該年度版の手帳(例:「いきいきシニアポイント手帳2025」「同2026」)が配布される。参加者はこの手帳に日々の健康づくり活動を自己申告で記録していく。(参考:京都市:令和8年度健康ポイント事業「いきいきシニアポイント」の実施)
3. ポイント到達後の抽選応募
50ポイント以上貯まった時点で、手帳に付属する応募はがき、または京都市ホームページの応募フォームのいずれかから抽選に応募できる。応募締切は年4回(6月末・9月末・12月末・2月末)設定されており、達成のタイミングに応じて随時応募できる分割応募方式になっている。(参考:京都市:令和8年度健康ポイント事業「いきいきシニアポイント」の実施)
4. 委託事業者と地域介護予防推進センターによる実施体制
事業の実施主体は京都市(保健福祉局健康長寿のまち・京都推進室健康長寿企画課)であり、毎年度、公募型プロポーザルで選定した事業者に手帳の作成や応募受付といった運営業務を委託している。手帳の配布・回収の窓口としては、区役所・支所に加えて、フレイル対策の既存拠点である地域介護予防推進センターが活用されている。(参考:京都市:保健福祉局健康長寿のまち・京都推進室健康長寿企画課、京都市:地域介護予防推進センター)
1. デジタル機器を前提としない紙の手帳・自己申告制
スマートフォンアプリやウェアラブル端末の利用を前提とせず、紙の手帳への自己申告記録だけで参加が完結する設計になっている。区役所や老人福祉センターといった高齢者が日常的に訪れる窓口だけで、手帳の入手から応募はがきの投函まで完結できるため、デジタル機器に不慣れな高齢層でも参加のハードルが低い。
2. 既存の複数施策を束ねる「統合ハブ」としての手帳
健診受診、通いの場参加、地域活動、ボランティア、外出、食生活改善、個人目標設定、市民ぐるみのウォーキング運動(プラスせんぽ)という、京都市がすでに個別に展開していた複数の高齢者施策やキャンペーンが、1冊の手帳の中でポイント種別として並置されている。新しい活動をゼロから作り出すのではなく、既存の健康資源への動線を1枚のポイントカードに集約する再編的なアプローチだと言える。
3. 医療的行動と社会的行動を同一の評価軸で扱う
フレイル対策の3本柱である「運動」「栄養・口腔」「社会参加」を、そのままポイント種別に落とし込んでいる。健診受診のような医療的行動だけでなく、地域活動への参加や家族・友人との外出といった社会的行動も同じ「ポイント」という単位で評価している点は、社会参加の重要性を強調する京都市のフレイル対策の考え方を制度設計に反映したものと言える。(参考:京都市:フレイル対策で健康長寿)
4. 専門職伴走型のデータ活用モデルとの役割分担
京都市はNECとの官民連携により、通いの場での専門職伴走とデータ活用によるフレイル対策も並行して進めている。こちらは体力測定などを通じて個々の参加者の状態を継続的に追跡する「濃い」支援である一方、対象は既に通いの場や介護予防教室に参加している層が中心となる。いきいきシニアポイントは自己申告・低コストで幅広い高齢者に届く「広い」施策であり、両者は支援の密度と到達範囲のトレードオフを分担する形で共存していると捉えることができる。(参考:NEC wisdom:京都市にみる「フレイル予防」の未来とは?)
5. 単年度事業ではなく継続的な定常事業としての運用
令和4年度の開始から令和8年度まで5年連続で実施されており、年度ごとに手帳を更新しながら公募型プロポーザルによる運営委託を続けている。単発の実証事業ではなく、京都市の高齢者施策における定常的な基盤事業として運用されている。(参考:京都市:令和8年度健康ポイント事業「いきいきシニアポイント」の実施、京都市:「いきいきシニアポイント」について)
1. 事業としての継続性
いきいきシニアポイントは、令和4年度の開始以降、令和8年度まで毎年度、手帳の更新(2024年度版・2025年度版・2026年度版の存在を確認)と公募型プロポーザルによる運営委託を伴いながら継続実施されている。単年度の実証実験ではなく、通常の行政サービスとして定着していることが、公開されている各年度の実施案内から確認できる。(参考:京都市:令和8年度健康ポイント事業「いきいきシニアポイント」の実施、京都市:「いきいきシニアポイント」について)
2. 参加者数・応募実績そのものは非公表
一方で、いきいきシニアポイント自体の参加者数、手帳配布数、応募件数、当選者数といった活動量を示すデータは、調査時点で京都市の公開資料からは確認できなかった。事業がどれだけの高齢者に実際に届いているのかを定量的に検証するための情報は、外部からは把握しづらい状態にある。
3. 隣接するデータ活用施策では個々人の改善を確認
いきいきシニアポイントとは別の枠組みだが、京都市が並行して進める通いの場でのデータ活用施策(NECとの官民連携)では、専門職が伴走した通いの場の参加者について「歩行年齢の若返り」や「食品摂取の多様性の向上」といった改善が確認されており、令和3年度には約4000人分の体力測定データから、参加者のうち2割程度がフレイル状態にあると推計されるなど、対象者の状態把握も進んでいる。これはいきいきシニアポイント自体の成果ではないが、京都市がフレイル対策全体として個々人の改善を定量的に確認しつつあることを示しており、いきいきシニアポイントが参加を呼びかける先の「受け皿」に一定の実効性があることを示す傍証と言える。(参考:NEC wisdom:京都市にみる「フレイル予防」の未来とは?)
なお、この視点でも医療費削減や要介護認定率への影響までは測定されておらず、フレイル対策の効果を市全体の政策指標のレベルで裏付けることの難しさが、事業を担う京都市自身によっても認識されている。(参考:NEC wisdom:京都市にみる「フレイル予防」の未来とは?)
1. 「広く浅く」と「狭く深く」を組み合わせる複層設計
京都市は、専門職が伴走し体力測定データで効果を追跡する「狭く深い」施策(通いの場でのNECとの官民連携)と、紙の手帳と自己申告だけで完結する「広く浅い」施策(いきいきシニアポイント)を並行して運用している。限られた専門人材・予算の中で、深い支援を必要とする層と、まず参加のきっかけを必要とする層の両方にアプローチするこの複層構造は、フレイル対策の裾野を広げたい他自治体にとって参考になる設計思想である。
2. 新規事業ではなく既存資源の再編で参加の入口を作る選択肢
いきいきシニアポイントは、新しい活動や施設をゼロから立ち上げたのではなく、既に存在していた健診制度・通いの場・地域活動・ウォーキング運動を、1冊の手帳という単純な仕組みで束ね直したものである。複数の高齢者施策を抱えながらも個々の認知度や参加率に課題を持つ自治体にとって、新規事業を積み増すのではなく、既存施策への動線を可視化・統合するという再編アプローチは、追加コストを抑えた改善策の選択肢になり得る。
3. デジタル前提にしない設計が持つ効果と限界の両面
紙の手帳・自己申告・郵送はがきという枠組みは、デジタル機器に不慣れな高齢層への参加障壁を下げる一方、記録の正確性が本人の申告に依存し、そもそも申告や応募という行為自体が難しい高齢者をどこまで捕捉できているかという限界も併せ持つ。デジタル化・非デジタル化のいずれを選ぶかを検討する他自治体は、この「捕捉できる層」と「捕捉できない層」のトレードオフを踏まえて制度を設計する必要がある。
4. 活動量指標の公表が政策検証の前提になる
京都市自身、専門職が伴走するデータ活用施策についてすら、医療費や要介護認定率への効果測定には至っていないと認識している。いきいきシニアポイントのような裾野拡大型の施策については、少なくとも参加者数や応募件数といった活動量の指標を継続的に公表する仕組みを持つことが、他地域が政策効果を評価・比較検討する上での前提条件になる。本事例でこうした活動量データそのものが確認できなかった点は、同種の制度を設計・運用する他自治体が留意すべき論点である。
2026年08月時点の調査内容に基づいて作成
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