
常石グループ複合施設「せとのおか」
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
広島県福山市の常石グループが、老朽化した従業員寮「海友荘」と、既に一般営業を終えていた「常石ハーバーホテル」を統合し2025年に新設した複合施設。ホテルは非公開のまま、レストランのみを地域に開放する福利厚生再構築の事例。
広島県福山市沼隈町常石で、造船・海運業を中核とする常石グループ(2026年1月にツネイシホールディングス株式会社から商号変更)が、2025年に複合施設「せとのおか」を新設した。鉄筋コンクリート造6階建て、延床面積6,415.56㎡の建物で、東棟に従業員寮117室(35歳未満のグループ社員向け)、西棟にホテル44室を配置し、2025年4月に寮の運営を、同年5月23日にホテルとレストランの営業を開始した。 (参考:常石グループ プレスリリース(2025年5月)、Fortec Architects プロジェクトページ、ツネイシHD、26年1月に社名を「常石グループ」に|日本経済新聞)
この施設は、1967年から使われ老朽化した従業員寮「海友荘」の解体と、2021年末に一般営業を終了していたビジネスホテル「常石ハーバーホテル」という、性質の異なる二つの宿泊系福利厚生施設を一つの建物に集約したものである。2階のレストラン「おか食堂」のみが一般客にも開放されており地域住民との接点として位置づけられている一方、ホテル自体の宿泊予約は常石グループ関係者・取引先経由に限定され、一般客は利用できない。 (参考:常石グループ 社員寮建て替えのお知らせ(2023年11月)、せとのおかホテル公式ページ)
常石グループの従業員寮「海友荘」は昭和42年(1967年)の開設以来、55年以上にわたって従業員の住居として使われてきたが、老朽化により令和5年(2023年)4月に閉館・解体された。同社は2023年11月の時点で「他の施設で収容しきれない従業員」の受け皿となる新施設の建設を発表しており、単なる建て替えではなく収容力そのものの不足も課題としていたことがうかがえる。 (参考:常石グループ 社員寮建て替えのお知らせ(2023年11月))
並行して、同グループが運営してきた「常石ハーバーホテル」も2021年12月31日をもって一般宿泊客向けのビジネスホテル事業とレストラン営業を終了し、以後は「常石グループ向け福利厚生施設及びグループ関連関係者宿泊施設」として機能を縮小していた。老朽化した社員寮と、営業を縮小した既存ホテルという二つの宿泊関連施設を同時に抱える状態が、今回の複合施設化の前提になっていたと考えられる。 (参考:常石グループ 常石ハーバーホテル運営変更のお知らせ(2021年12月))
事業目的として、常石グループは「従業員の更なる福利厚生向上と、地域社会への貢献を両立させること」を掲げており、加えて「増加する新造船や修繕船の乗組員」向けの宿泊機能拡充も企図していた。1917年創業の中核企業・常石造船が福山市沼隈町常石に本社・工場を置く企業城下町的な立地であることも背景にあり、施設支配人は移転ではなく既存地での建て替えを選んだ理由について「地域、社会と共に歩むという価値観に沿うような施設にするために、あえて既存の土地を活用した」と説明している。加えて、同地域は飲食店が少ないという課題も、レストラン一般開放の動機として挙げられている。 (参考:常石グループ プレスリリース(2025年5月)、ひろしま企業図鑑、常石造船|Wikipedia)
1. 老朽化施設の把握と建て替え発表
2023年11月、常石グループは老朽化した海友荘の閉館・解体を受け、新施設の建設を発表した。この時点では建物名称や宿泊施設の営業形態は「現在のところ未定」とされており、複合施設としての具体像は後から固められていったことがわかる。 (参考:常石グループ 社員寮建て替えのお知らせ(2023年11月))
2. 立地の踏襲と設計
新施設は市街地への移転も選択肢としてありながら、従来の海友荘・常石ハーバーホテルと同じ沼隈町常石の敷地(敷地面積7,725.87㎡)に建設された。設計はFortec Architectsが担当し、「山に還る」というコンセプトのもと、外装に木調のバルコニーと壁面緑化をランダムに配置し、延床面積6,415.56㎡・地上6階建てという大規模な建物でありながら周辺景観に溶け込むデザインとする工夫が図られている。2023年12月に着工し、2025年3月に竣工した。 (参考:Fortec Architects プロジェクトページ、ひろしま企業図鑑)
3. 段階的な開業
施設は一括開業ではなく、2025年4月1日に従業員寮の運営を先行して開始し、続く同年5月23日にホテルとレストランの営業を開始するという2段階の開業プロセスを踏んだ。 (参考:常石グループ プレスリリース(2025年5月))
4. 機能の配分
建物内は、東側に35歳未満のグループ社員向け従業員寮117室、西側にホテル44室(スタンダード19㎡、デラックス28㎡)を配置し、2階に一般利用も可能なレストラン「おか食堂」、6階に展望大浴場・サウナを設けている。ホテルの宿泊予約は常石グループ関係者・取引先企業の従業員を通じてのみ受け付けており、一般客が直接予約することはできない。 (参考:せとのおかホテル公式ページ、ひろしま企業図鑑)
なお、おか食堂の問い合わせ電話番号は、一般営業を終了する以前の常石ハーバーホテルの問い合わせ先と同一であり、旧施設からの機能的な連続性がうかがえる。 (参考:常石グループ 常石ハーバーホテル運営変更のお知らせ(2021年12月)、ひろしま企業図鑑)
1. 「開く場所」と「開かない場所」の明確な切り分け
「せとのおか」は地域交流拠点としての性格が報じられているが、実際に一般開放されているのは2階のレストラン「おか食堂」(昼11時30分~14時、予約不可/夜17時30分~21時、要予約)と、貸室扱いの多目的室に限られる。ホテル・寮という建物の主要な機能自体は非公開のままであり、福利厚生施設としての性格を維持しながら、対外的な接点を飲食・会合機能に絞り込むという設計判断がなされている点が特徴である。 (参考:常石グループ プレスリリース(2025年5月)、せとのおかホテル公式ページ)
2. 性質の異なる二つの老朽化施設の統合
単一の社員寮の建て替えではなく、住居機能を担ってきた「海友荘」と、既に一般営業を終えていたビジネスホテル「常石ハーバーホテル」という異なる性質の宿泊系福利厚生資産を一つの建物に集約した点は、複数の老朽化施設を抱える企業にとって参考になりうる再編の形である。 (参考:常石グループ 社員寮建て替えのお知らせ(2023年11月)、常石グループ 常石ハーバーホテル運営変更のお知らせ(2021年12月))
3. 建物単体での環境性能認証取得
BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の認証で、従業員寮は「ZEH Oriented」、ホテルは「ZEB Ready」を取得している。断熱材や空調設備の具体的な仕様は公表されていないが、福利厚生施設として環境性能の第三者認証を取得し明示した点は、同種の施設更新を検討する他企業にとって一つの参考水準になりうる。 (参考:常石グループ プレスリリース(2025年5月)、Fortec Architects プロジェクトページ)
2025年4月・5月の開業から2026年9月の調査時点までの間に、常石グループ自身による定量的な利用実績(来店者数、多目的室の利用件数、地域住民の利用比率等)の公表は確認できなかった。開業を報じた常石グループ公式・中国新聞・山陽新聞・地域経済メディアの記事はいずれも開業時点の施設紹介にとどまり、開業後の地域交流の実態を継続的に追跡した報道は見当たらない。 (参考:中国新聞デジタル、山陽新聞デジタル)
確認できる定性的な情報としては、地域企業メディアの取材に応じた施設支配人が、飲食店の少ない地域住民向けにレストランを開放したと説明していることが挙げられる。一方で、施設側から発信された地域向けイベントの開催実績や、多目的室が実際に地域の会合等に使われた事例についての報道・発表は確認できておらず、「地域交流拠点化」という意図は明確に示されているものの、調査時点でその定着度合いを裏付ける客観的なデータは確認できない。 (参考:ひろしま企業図鑑)
福利厚生面では、老朽化した海友荘に代わる新しい住環境と、環境性能認証を取得した建物が従業員に提供されたことが、確認可能な範囲での直接的な成果である。 (参考:常石グループ プレスリリース(2025年5月))
複数の老朽化した福利厚生施設をまとめて再編するタイミングの設計
企業が単独の建て替えではなく、機能が近い複数の老朽化施設(社員寮と、営業を縮小した保養所・ホテル等)を洗い出し、更新のタイミングを揃えて一つの施設に集約するという発想は、地方に工場・事業所を持つ企業城下町型の立地において再現性がある。個別に古い施設を維持し続けるより、更新コストとその後の運用効率の両面で合理的な選択となりうる。
「地域に開く範囲」を限定して明示することの重要性
本事例は、地域交流拠点という打ち出し方をしながらも、実際に開放されるのは飲食・会合機能のみで、宿泊機能は関係者限定という線引きを明確にしている。福利厚生施設の一部を地域に開放しようとする他の企業や自治体にとって、「何を開き、何を開かないか」を曖昧にせず設計段階で切り分けておくことは、開放後の過大な期待とのギャップを避ける上で参考になる。
行政の補助に依らない、企業単独での生活インフラ補完モデル
飲食店の少ない地域において、企業が自社の福利厚生施設内のレストラン機能を一部地域に開放する手法は、公共施設の新設や自治体の補助金に依存せず、企業の自己資金と既存の運営体制の延長線上で実施できる点で、他の企業城下町・工場立地地域にも応用しやすいモデルといえる。ただし、その効果を継続的に検証し公開する仕組みがなければ、他地域が模倣する際の判断材料に乏しくなる点には留意が必要である。
2026年9月時点の調査内容に基づいて作成
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