
防災・防犯 そなえよう すぎなみ 選べるカタログ
杉並区が2025年度に実施した防災・防犯用品カタログ配付事業。区内全世帯に3,000円相当の用品を配布し、在宅避難の促進と防犯意識の向上を図る東京23区初の防災・防犯統合型カタログギフト。
「防災・防犯 そなえよう すぎなみ 選べるカタログ」は、杉並区が2025年度に実施した防災・防犯用品の全世帯配付事業である。2025年6月1日時点で区内に住民登録がある全世帯を対象に、各世帯に3,000円分の防災・防犯用品1点を届けるカタログ冊子を配布した。東京23区では江東区、世田谷区、中央区に続く防災カタログギフト事業の実施となったが、防犯用品も選択肢に加えた統合型の取り組みは杉並区が先駆けとなった。 (参考:杉並区公式サイト、ギフトパッド プレスリリース)
東京都は2022年5月に首都直下地震等による被害想定を約10年ぶりに見直し公表した。この想定では、多摩東部直下地震(マグニチュード7.3)により杉並区内の約半分の地域で震度6強、残りの地域で震度6弱が発生すると予測されている。こうした大規模災害に備え、避難所への集中を回避し、各世帯での備蓄を通じた在宅避難を促進する必要性が高まっていた。 (参考:杉並区版地震被害シミュレーション、東京都被害想定)
防災に加え、強盗や特殊詐欺といった犯罪が社会問題化していたことも背景にある。区民の生命と財産を守るという観点から、防災と防犯を一体的に支援する施策の必要性が認識された。 (参考:杉並区公式サイト)
防災カタログギフト事業は2023年4月に江東区が23区初の取り組みとして開始し、関東大震災100年を契機に23区内で広がりを見せていた。中央区は2024年11月から1人あたり5,000円相当、世田谷区は2024年8月から世帯人数×3,000円相当の配布を開始している。杉並区はこれらの先行事例を参考に、独自の特徴を加えて事業化した。 (参考:江東区公式サイト、中央区公式サイト、世田谷区公式サイト)
2024年10月、杉並区議会の決算特別委員会において倉本みか区議が「防災カタログギフト事業」を提案した。江東区や世田谷区などの先行事例を調査研究し、杉並区の実情に合わせて防犯用品も選択肢に含める独自の形での事業化を求めた。この提案を受け、東京都の補助制度を活用して2025年度予算に組み込まれた。 (参考:倉本みか区議ブログ)
カタログは単なる商品選択ツールではなく、災害時・犯罪発生時に参照できる実用的なマニュアルとして設計された。地震や風水害への事前の備え、発災時の初動対応、避難生活の留意点、強盗・空き巣・特殊詐欺への対処法など、保存版の防災・防犯ハンドブックとして活用できる内容を掲載している。
配布スケジュールは以下の通りである。
申請方法はWeb申請と郵送(返信はがき)の2通りを用意し、デジタルに不慣れな高齢者世帯も参加しやすい仕組みとした。当初の申請期限は2025年11月30日だったが、12月10日まで延長された。選んだ用品は2025年12月から2026年3月にかけて順次配送される。
運営は株式会社ギフトパッドが受託し、カタログ作成、用品調達、配送管理、申込Webサイトの開設、コールセンター運営などを一括で担当した。同社は江東区など複数の自治体で防災カタログギフト事業の実績を持つ。 (参考:ギフトパッド プレスリリース)
東京23区の防災カタログギフト事業の多くが防災用品のみを対象とする中、杉並区は防犯用品も選択肢に加えた。防犯カメラ、センサーライト、窓・ドア用補助錠、防犯ブザーなどが選べるようになっており、災害リスクと犯罪リスクの両方に対応できる設計となっている。
行政が一律に防災用品を配布する方式では、すでに各家庭で備えているものと重複してしまう可能性がある。カタログ形式を採用することで、各世帯が自らのニーズに合った用品を選択でき、無駄を防ぐことができる。
カタログを見ながら住民自身が選択することで、住んでいる地域のリスク(浸水想定区域かどうか、木造密集地域かどうかなど)に応じた備えが可能になる。一律配布では実現しにくい、きめ細かな対応を可能にしている。
カタログ自体が防災・防犯の実用的なマニュアルとして構成されており、用品選択後も手元に置いて参照できる。区の公式LINEの活用方法なども掲載され、平時からの防災意識向上に寄与する設計となっている。
2025年12月10日をもって申込受付は終了した。選択した用品は2026年3月31日までに全世帯に配送される予定である。 (参考:杉並区公式サイト)
カタログには防災・防犯の両カテゴリから幅広い用品が掲載された。
防災用品
防犯用品
事業の所管は杉並区危機管理室の防災課と危機管理対策課が共同で担当した。申請期間中は区役所西棟6階に窓口を設置し、コールセンター(フリーダイヤル:0120-651-025)も開設して問い合わせに対応した。
他自治体の先行事例を参考にしつつ、地域の課題に応じた独自要素を加えることで、より効果的な施策を迅速に立ち上げられる。杉並区が防犯用品を加えたように、基本的な枠組みを踏襲しながら地域特性に合わせたカスタマイズが有効である。
区議会議員の提案が事業化につながった点は、住民の声を政策に反映させる民主的プロセスの実例として参考になる。議員が他自治体の事例を調査研究し、地域の課題解決に活用する提案を行うことで、行政主導では生まれにくい施策が実現する可能性がある。
カタログギフト事業に実績のある専門事業者への委託は、自治体職員の負担軽減と高品質なサービス提供の両立を可能にする。複数自治体での経験を持つ事業者は、効率的な事業運営のノウハウを蓄積しており、初めて実施する自治体にとって有効な選択肢となる。
大規模災害時に避難所だけで全被災者を受け入れることは現実的に困難である。各世帯での備蓄を促進し、在宅避難を可能にする取り組みは、災害対応力向上の鍵となる。カタログ配布を通じて、住民自身に備蓄の必要性を考えてもらう機会を提供することは、防災意識の底上げにも効果的である。
東京都の補助制度を活用することで、区単独では予算確保が難しい大規模事業も実現可能になる。自治体にとって、国や都道府県の補助メニューを積極的に活用する姿勢が、住民サービスの拡充につながる。
2026年3月時点の調査内容に基づいて作成
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