
とつぜんはじまる避難訓練2025 in 福岡市
福岡市とLINEヤフーコミュニケーションズが共働で実施する、LINEで完結する3分間のオンライン避難訓練。予告なしの通知で災害対応を疑似体験できる。
「とつぜんはじまる避難訓練」は、福岡市とLINEヤフーコミュニケーションズ株式会社が共働で実施するオンライン避難訓練である。福岡市LINE公式アカウントを活用し、「LINEだけで・どこにいても・3分でできる」という手軽さを実現した。2025年の実施は、福岡県西方沖地震から20年となる節目に合わせて行われ、市民の防災意識向上と災害時のLINE活用方法の周知を目指している。 (参考:LINEヤフーコミュニケーションズ プレスリリース)
2005年3月20日、福岡県北西沖の玄界灘を震源とするマグニチュード7.0の地震が発生し、福岡市内で震度6弱を観測した。この福岡県西方沖地震では1名が死亡し、玄界島では住家107棟が全壊するなど甚大な被害をもたらした。地震を引き起こした警固断層帯は、福岡市直下を通る55kmほどの活断層であり、南東部が動いた場合にはM7.2程度の地震発生が予想されている。今後30年以内の発生確率は最大6%と、国内の活断層の中でも「地震が発生する可能性が高いグループ」に属する。 (参考:福岡市 西方沖地震20年特設サイト、株式会社レスキューナウ)
一方で、LINEヤフーコミュニケーションズが実施した福岡県民518名を対象とした調査では、61%が「防災対策ができていない」と感じていることが明らかになった。理由として「やろうと思っているが先延ばしにしている」「具体的に何から行えばいいかわからない」「面倒」といった声が挙がっている。災害発生時の行動確認や避難所確認といった、命を守る基本的な対策が後回しにされている実態がある。 (参考:PR TIMES プレスリリース)
「とつぜんはじまる避難訓練」は、2020年に初めて実施された。当時は新型コロナウイルス感染症の影響で「一カ所に集まる従来の避難訓練は実施が困難」という課題があり、密を避けるデジタル形式の避難訓練として企画された。 (参考:Impress Watch)
2025年の実施では、参加登録期間を3月13日から27日、訓練実施期間を3月20日から31日に設定した。3月20日は福岡県西方沖地震の発生日であり、福岡市が「市民防災の日」と定めている。参加者は福岡市LINE公式アカウントを友だち追加して参加登録を行うと、訓練期間中の8:30から21:00の間にランダムなタイミングで「訓練開始」の通知を受け取る。通知がいつ届くかは予告されない。 (参考:とつぜんはじまる避難訓練2025 特設サイト)
訓練内容は地震を想定しており、トーク形式で災害時の行動確認と避難所検索を体験する。所要時間は約3分である。位置情報を送信すると、現在地から半径1km以内の避難所を自動検索する機能や、検索した避難所情報をLINEの友だちにシェアする機能も体験できる。最後にチェックテストに挑戦し、採点まで完了すると訓練終了となる。 (参考:LINEヤフーコミュニケーションズ プレスリリース)
訓練と連動して、六本松421では「WiTH BOUSAI」フェアが3月17日から21日まで開催された。福岡市科学館、ボンラパス トレゾ、牛島製茶、ドラッグイレブン、六本松 蔦屋書店などが参加し、防災関連商品の特設コーナーや福岡県西方沖地震に関する展示が行われた。3月20日の「市民防災の日」には、訓練参加登録者を対象に防災備蓄品のプレゼントと福岡市科学館入場引換券の抽選が実施された。 (参考:PR TIMES プレスリリース)
本訓練の最大の特徴は「予告なしの通知」という設計にある。実際の災害はいつ発生するかわからない。参加登録をした後、いつ届くかわからない「訓練開始」の通知を待つ体験そのものが、災害への心理的な備えとなる。日常生活の中で突然通知を受け取ることで、災害発生時の初動行動を身体的に確認できる。 (参考:LINEヤフーコミュニケーションズ Press)
「避難行動のシェア機能」も独自の工夫である。自分の避難先を家族や友人にLINEで共有することで、安否確認と警戒情報の伝達を同時に行える。日本赤十字社の災害対応の専門家からは「行政の警戒情報を市民が身近な人に届ける新たな参加型の早期警戒情報」として評価されている。 (参考:LINEヤフーコミュニケーションズ Press)
参加のハードルを下げる工夫として、訓練完了者にはシェアサイクルサービス「チャリチャリ」のライドチケット(最大12分相当、最大90円割引)が提供される。チケット引換期間は3月20日から4月15日で、有効期限はチケット受取から30日間である。 (参考:とつぜんはじまる避難訓練2025 特設サイト)
2020年の初回実施では、14,000人以上が参加登録し、参加者の93.8%が「防災意識が向上した」と回答した。この結果を受けて、同様の取り組みは他都市へも展開されている。那覇市では「従来の訓練では子育て世代や若年層の参加が少なかった」という課題を解決する手段として、オンライン形式の避難訓練が導入された。 (参考:LINEヤフーコミュニケーションズ プレスリリース、LINEヤフーコミュニケーションズ Press)
福岡市LINE公式アカウントには「避難行動支援機能」が常設されており、平常時には防災情報の受信設定や避難所検索、福岡市総合ハザードマップへのアクセスが可能である。災害時には開設された避難所の検索や避難情報のプッシュ通知を受け取ることができる。訓練を通じてこれらの機能を事前に体験しておくことで、実際の災害時に活用できる状態を作っている。 (参考:福岡市 LINE公式アカウント 避難行動支援機能)
「とつぜんはじまる避難訓練」は、従来の避難訓練が抱える課題に対する一つの解答を示している。一カ所に集まる必要がないため、仕事や家事で忙しい人、小さな子どもがいる人、外出が困難な人でも参加できる。LINEという日常的に使うアプリを活用することで、新たなアプリのダウンロードや操作習得の負担がない。
福岡市から那覇市への展開事例が示すように、このモデルは他の自治体でも導入可能である。特に「従来の避難訓練への参加率が低い」「若年層や子育て世代にリーチできていない」といった課題を持つ地域では有効な選択肢となりうる。LINEの自治体公式アカウントを運用している自治体であれば、比較的少ない追加投資で同様の取り組みを実施できる可能性がある。
一方で、デジタルに不慣れな高齢者や、スマートフォンを持たない層への配慮は別途必要である。オンライン訓練と従来型の対面訓練を組み合わせることで、より幅広い市民に防災教育を届けられるだろう。
2026年3月時点の調査内容に基づいて作成
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