
サポぬま - 「静岡方式」の伴走型就労支援を核に、こども食堂・学習支援・フードドライブを束ねる市民ボランティアネットワーク
沼津市で、NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡の東部拠点として活動する市民グループ「サポぬま」。就労困難な若者への伴走型支援「静岡方式」を核に、こども食堂・学習支援・月例フードドライブ・相談支援を連動させ、困窮世帯を継続的に支える。
「サポぬま」は、NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡の沼津地域ボランティアグループである。母体のNPOは2002年に静岡市で任意団体として発足し、2004年にNPO法人の認証を受けた組織で、就労に困難を抱える若者に地域ボランティアが継続的に寄り添う「静岡方式」と呼ばれる伴走型支援を提唱・実践している。サポぬまはその東部(沼津周辺)拠点にあたるボランティアの集まりである。 (参考:NPOについて(NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡)、サポぬま)
沼津市内および清水町・函南町・長泉町など近隣自治体を活動範囲とし、こども食堂、学習支援(にじっこ・かんがるー隊)、月例フードドライブ「たべもの応援」、相談支援という複数のプログラムを一体的に運営している。市とは2011年度(平成23年度)の「ホームレス等貧困・困窮者の『絆』再生事業」、2015年度(平成27年度)の沼津市生活困窮者自立相談支援事業を通じた連携の実績があり、市内の自立相談支援窓口(サンウェルぬまづ内)とも活動地域を共有している。 (参考:NPOについて(NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡)、生活困窮者支援/沼津市)
母体NPOの静岡方式は、理事長(当時)を務めた津富宏氏が法務教官として少年院に勤務した経験に端を発する。就労の有無が再犯の可能性を大きく左右するという気づきから、仕事を得ること自体を人が立ち直る上での基盤と捉え、資格を問わない市民ボランティアが若者一人ひとりに伴走する仕組みとして構想されたという。 (参考:若者就労支援「静岡方式」の強み「地域は資源のオアシス」だ(情報労連リポート))
沼津地域では、ひとり親家庭、外国人労働者、就労に困難を抱える若者、生活困窮世帯の高齢者など、複数の属性にまたがる困窮ニーズが存在する。沼津市の自立相談支援センターは自立相談支援、家計改善支援、住居確保給付金、就労準備支援、居住支援(一時生活支援)、学習支援の6事業を公的に提供しているが、これらは相談・給付を軸とした制度であり、日常的な食料の確保や子どもの居場所、地域とのつながりまでを継続的に支えるには、行政の枠組みだけでは手が届きにくい部分が残る。 (参考:生活困窮者支援/沼津市)
こうした制度の外側にある日常的な困りごとを、資格を問わない地域ボランティアが継続的に埋めていく必要性が、サポぬまの複数プログラムが並行して育っていった背景にあると考えられる。
静岡方式では、支援対象の若者1人に対してサポーター2〜3人が資格を問わず担当し、おおむね半年程度にわたって無償で伴走する。相談に乗るだけでなく、就労体験先の紹介、時にはメールで気にかけていることを伝えたり、就労を経験した先輩が自らの体験を語ったりと、関わり方は担当者ごとに幅があり、こうした「地縁・血縁・校縁」を生かして受け入れ先を開拓する。この枠組みを沼津地域で担っているのがサポぬまである。 (参考:若者就労支援「静岡方式」の強み「地域は資源のオアシス」だ(情報労連リポート))
サポぬまは複数の会場でこども食堂を運営・支援している。真楽寺(沼津市)では「かわうそ堂」として檀家が調理を担当するこども食堂が定期的に開かれ、ひとり親家庭や困窮世帯が利用している。大中寺こども食堂では住職が調理を担当する例も報告されており、居酒屋「心」(沼津市添地町)では毎月第3日曜日にカレーを中心としたこども食堂が開催されている。 (参考:こども食堂(サポぬま))
学習支援は「かんがるー隊」と「にじっこまなび場」の2つの枠組みで運営されている。かんがるー隊は毎週金曜日17時〜20時(夏休み期間は火曜日9時〜17時)、にじっこまなび場は土曜日13時〜16時に実施され、会場はサンウェルぬまづ、清水町(希望のわだち柿田教室)、函南町、長泉町、高校内カフェなど複数箇所に及ぶ。単に勉強を教える場ではなく、調理活動(シチュー、おはぎ、たこ焼きなど)、寄付金で仕入れた駄菓子を配る「巡回駄菓子屋」、店舗運営を模した就労体験、長期休暇中の見守りなど、学習・食事・居場所・就労体験を一体化した内容になっている。 (参考:学習支援(にじっこ・かんがるー隊)(サポぬま))
食料配付活動「たべもの応援」は毎月第一金曜日にサンウェルぬまづ等で開催される形で定着している。2025年4月4日の回では170セットを配布し、沼津中央青果(野菜・果物)、カサデアミーゴス(アルファ米)、オイシックス・ラ・大地(コーヒー)、報徳食品支援センター(カップ麺・お菓子)、内俊水産(干物131枚)、赤武エンジニアリング(アルファ米)、沼津市社会福祉協議会(生理用品・キャベツ)、フードバンクぬまづ(ドリンク)が協力した。2026年4月3日の回では140世帯に配布し、沼津中央青果、カサデアミーゴス、オイシックス・ラ・大地(米180kg・お菓子・生姜)、真楽寺・自得院(伊豆市、お彼岸供え物)などが協力している。配布対象はひとり親世帯、外国人労働者、生活困窮下にある若者、高齢者である。 (参考:フードドライブ(サポぬま))
このほか冬季には真楽寺で「お寺フードドライブ」も開催されており、沼津市仏教婦人会・青年仏教会が運営を担う。市役所や市民窓口事務所、社会福祉協議会など市内6カ所で未開封・賞味期限2ヶ月以上の食品(米、缶詰、パスタ、インスタント食品、レトルト食品、ベビーフードなど)を回収し、フードバンクふじのくにを通じて配布する仕組みで、2019年夏頃からは寄贈食品を直接受け取ることで困窮世帯への配送を迅速化したという。 (参考:冬のお寺フードドライブ(サポぬま))
サポぬまの活動は、単一の福祉サービスではなく、就労支援・こども食堂・学習支援・フードドライブ・相談支援という複数のプログラムを一つのボランティアネットワークが横断的に担っている点に特徴がある。ひとり親家庭であれば学習支援とフードドライブの両方を、就労困難な若者であれば伴走型の就労支援とこども食堂の両方を、それぞれ同じ担い手から継続的に受けられる構造になっており、困窮世帯が抱える「食」「学び」「居場所」「就労」という複合的な課題に対して、縦割りの制度では生まれにくい面的な支援が可能になっている。
もう一つの特徴は、母体である静岡方式が持つ「資格を問わない地域ボランティアが主体」という性質をそのまま沼津地域に移植し、専門職の確保が難しい地方都市でも成立する仕組みとして運用している点である。
さらに、フードドライブという負担の軽い活動を接点に、寺院(真楽寺、大中寺)、飲食店(居酒屋「心」)、地場の卸・小売(沼津中央青果)、食品企業(オイシックス・ラ・大地、内俊水産など)、仏教婦人会・青年仏教会、社会福祉協議会、行政という、性質の異なる多様なセクターを継続的に巻き込んでいる点も特徴的である。単発の協賛ではなく、月次・季節ごとに繰り返し協力を得ている点は、地域内の多主体連携が制度としてではなく習慣として根付いていることを示している。
公開情報から確認できる範囲では、以下の点が事実として確認できる。
なお、母体のNPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡は、2025年6月時点で約2,500名のボランティアが登録し、支援対象者の7〜8割が無業の状態から就労に至っているとしているが、この数値は静岡県内の活動全体を対象としたものであり、沼津地域(サポぬま)単独の登録者数や就労実績は公開情報からは確認できなかった。 (参考:NPOについて(NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡))
サポぬまの事例が示すのは、就労支援・こども食堂・学習支援・フードドライブ・相談支援といった別々に語られがちな活動を、一つのボランティア母体のもとで横断的に運営することで、困窮世帯が抱える複合的な課題に継続的に対応できるという点である。特定の制度・給付だけを提供する事業に比べ、同じ担い手が複数の接点を持つことで、支援が必要な世帯を早期に把握し、切れ目なく次の支援へつなぎやすくなる構造上の利点があると考えられる。
資格を問わない伴走支援モデルである静岡方式は、専門人材の確保が難しい地方都市でも導入しやすい再現性を持つ。他地域でこの種の仕組みを立ち上げる際は、静岡方式の理念(地縁・血縁・校縁を生かした無償の伴走支援)を移植するだけでなく、フードドライブのような負担の軽い活動を協力の入り口にして、寺院・飲食店・地場企業・社会福祉協議会といった多様なセクターを段階的に巻き込んでいく手順が参考になる。
一方で、公開情報からはサポぬまを支えるボランティアの人数構成や後継者確保の状況、複数拠点・複数プログラムを支える運営体制の詳細までは確認できなかった。学習支援だけでも4つの自治体・複数会場にまたがる運営を、限られた市民ボランティアで継続していく体制には、担い手の負荷や高齢化といった持続性の課題が内在している可能性があり、他地域で同様の取り組みを検討する際には、活動の担い手を継続的に確保・育成する仕組みをあらかじめ組み込んでおくことが望ましい。
2026年7月時点の調査内容に基づいて作成
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