
福山市移住支援金制度(テレワーク・関係人口移住)
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福山市は東京圏からの移住者に世帯構成に応じた定額の移住支援金を交付する制度を運営し、転職を伴わないテレワーク移住や、農林水産業・家業継承・医療介護等の担い手となる関係人口移住も対象とする。2026年度分は受付開始から11日で予算上限に達し受付を停止した。
福山市は、東京圏からの移住者に経済的インセンティブを給付する国の「地方創生移住支援事業」を、広島県および県内他市町と共同で実施している。世帯構成に応じて単身世帯・2人以上世帯で異なる定額を交付する仕組みで、18歳未満の帯同者がいる場合はさらに加算される。財源の一部には国の地方創生推進交付金を活用している。 (参考:福山市ホームページ「移住支援金制度(テレワーク・関係人口移住)のご案内」)
対象となる移住類型は、広島県のマッチングサイト「ひろしまワークス」掲載求人への就業や起業に加え、移住前の勤務先の業務を退職せずテレワークで継続する「テレワーク移住」、市内に一定のつながりを持ち、農林水産業・家業継承・伝統工芸・バス/タクシー運転・医療・介護・保育など担い手不足が深刻な職種に従事する「関係人口移住」の合計4類型がある。このうちテレワーク移住・関係人口移住は企画政策課、就業・起業は産業振興課がそれぞれ窓口を担当している。2026年度(令和8年度)分は2026年8月20日に受付を開始したが、わずか11日後の8月31日、申請額が予算の上限額に達したことを理由に受付を一旦停止した。 (参考:福山市ホームページ「移住支援金制度(テレワーク・関係人口移住)のご案内」)
福山市の人口は国勢調査ベースで2015年の464,811人をピークに減少へ転じ、2020年には460,930人となった。これは1940年以来の減少である。住民基本台帳ベースの人口は2012年11月を境に減少局面に入り、2025年9月末時点で452,377人まで減少している。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(令和5年推計、中位推計)によれば、2040年には約41万人まで減少する見通しである。 (参考:福山市の少子化に関する現状について(第1回福山市少子化対策専門家会議 資料1))
人口減少の内訳をみると、出生数の減少による自然減が加速度的に進んでいるのに加え、社会動態でも転出超過が続いている。外国人を含む国内外移動でみた転出超過は3人にとどまる一方、日本人のみの国内移動に限ると転出超過数は1,197人にのぼり、社会減の存在が確認できる。 (参考:同資料)
こうした状況の下、福山市は国の「地方創生移住支援事業」の枠組みを活用し、東京圏からの移住者に移住支援金を交付している。この制度は本来、転職や起業を伴う移住を主眼として設計されているため、現在の仕事や収入を手放したくない層や、市内で新規就業には直結しないが地縁を持つ層を対象から外してしまう構造的な限界がある。福山市はこの限界に対応するため、移住前の業務をテレワークで継続する移住や、家族的なつながり・居住歴・就学歴を持ちながら地域の労働力不足が深刻な特定職種に就く「関係人口」移住を、就業・起業と並ぶ独立した支援類型として整備している。 (参考:福山市ホームページ、起業支援金・移住支援金(内閣府地方創生推進室))
1. 国の制度枠組みと広島県内での共同実施
制度の骨格は国の「地方創生移住支援事業」に沿っており、都道府県と市町村が協調して交付金を支給する仕組みをとる。広島県は県内市町と共同でこの事業を実施しており、福山市を含む複数の市町が対象となっている。財源の一部には国の地方創生推進交付金が充当されている。 (参考:福山市ホームページ、起業支援金・移住支援金(内閣府地方創生推進室))
2. 移住類型ごとに担当課を分けた執行体制
福山市庁内では、広島県のマッチングサイト「ひろしまワークス」掲載求人への就業や、県の起業支援金の交付決定を受けた起業を伴う移住は産業振興課が、テレワーク移住・関係人口移住は企画政策課(地方創生・SDGs推進担当)が、それぞれ窓口となって申請を受け付けている。申請者からは「移住支援金」という1つの制度として案内されつつ、庁内では類型ごとに担当が分かれている。 (参考:福山市ホームページ)
3. 共通要件(移住元・移住先)
申請者はまず共通要件を満たす必要がある。移住元の要件としては、福山市への転入前10年間のうち通算5年以上、かつ転入直前の1年以上は継続して、東京23区内に居住していた、または東京圏内の条件不利地域を除くエリアから23区内へ通勤していた実績が求められる。移住先の要件としては、申請時点で福山市への転入後1年以内であること、申請日から5年以上継続して市内に居住する意思を持つことが必要となる。 (参考:福山市ホームページ)
4. テレワーク移住の要件
テレワーク移住の場合は、共通要件に加えて、(1)会社側の指示ではなく本人の意思で移住し、移住先に生活の拠点を置きながら移住前の勤務先の業務を継続すること、(2)職場への定期的な通勤を伴わず、テレワークによる就労時間が週20時間を下回らないこと、(3)国の地域未来交付金(デジタル実装型)またはその前歴事業を活用した取組の中で、所属先企業等から移住者個人への資金提供を受けていないこと、の3要件を満たす必要がある。 (参考:福山市ホームページ)
5. 関係人口移住の要件
関係人口移住の場合は二段階の要件を課している。第一に、(ア)市内に3親等以内の親族が居住している、(イ)市内の企業等に1年以上勤務していた、(ウ)市内に通算1年以上居住していた、(エ)市内の大学等を卒業した、のいずれかで市との関係性を持つこと。第二に、その上で従事する職業が、農林水産業の新規就業者(認定新規就農者等)、家業(3親等以内の親族が経営する事業)の将来的な承継を目的とした就業者、経済産業省指定等の伝統工芸職従事者、バス・タクシー事業者に正規雇用される乗務員、医師・看護師、市が指定する市内の介護サービス事業所の介護職員、保育士・幼稚園教諭のいずれかに該当することが求められる。 (参考:福山市ホームページ)
6. 申請手続きと交付後の担保措置
テレワーク移住・関係人口移住の申請は、就業証明書や住民票、戸籍附表など要件ごとに定められた証憑書類を添えて企画政策課窓口へ提出する。交付後の担保措置として、不正受給や申請日から3年未満での市外転出は全額返還、3年以上5年以内の転出は半額返還とする規定が設けられている。 (参考:福山市ホームページ)
7. 年度ごとの募集と2026年度の早期受付停止
制度は年度ごとに募集を行う仕組みで、2026年度(令和8年度)分は2026年8月20日に受付を開始した。当初の申請期限は同年12月28日に設定されていたが、申請額が予算の上限額に達したため、期限を待たずに8月31日で受付を一旦停止しており、今後の再開状況は福山市の公式サイトで告知するとしている。 (参考:福山市ホームページ)
関係人口の定義を地域の労働力不足解消に直結させている
多くの自治体の関係人口型移住支援金は「地域と関わりのある者」という関係性の有無だけを要件とすることが多いのに対し、福山市は関係性の要件に加えて、従事する職業を農林水産業の新規就業、家業継承、伝統工芸、バス・タクシー乗務員、医師・看護師、介護職員、保育士など、市が担い手不足を認識している職種に限定している。関係人口という枠組みを、単なる人口誘致の入り口ではなく、担い手不足が顕在化している分野への人材誘導の手段として設計している点が特徴である。
家業承継を移住支援の対象に明示的に組み込んでいる
関係人口移住の要件の一つとして、3親等以内の親族が経営する事業の将来的な承継を目的とした就業を明示的に位置づけている。後継者不在に悩む地域の中小事業者にとって、県外に出た子や親族が地元に戻る際の経済的な後押しとなり得る仕組みであり、移住支援金が転入促進策であると同時に事業承継対策としての機能も併せ持つ。
類型ごとに担当課を分けつつ一体的に案内する執行体制
テレワーク移住・関係人口移住を企画政策課、就業・起業を産業振興課が担当する体制は、人口政策としての移住支援と、産業・雇用対策としての移住支援という異なる政策目的を庁内で役割分担しながら、申請者に対しては1つの「移住支援金」として一体的に案内している。
企業向け支援策との二重受給を防ぐ設計
テレワーク移住の要件には、国の地域未来交付金(デジタル実装型)等を通じて所属先企業から移住者個人へ資金提供を受けていないことという確認項目がある。企業のサテライトオフィス開設支援など法人向けの補助制度と、個人向けの移住支援金が同一の移住を対象に重複して使われることを防ぐ仕組みが明示的に組み込まれている。 (参考:福山市ホームページ)
福山市は2026年度分の移住支援金について、2026年8月20日に申請受付を開始したが、わずか11日後の同年8月31日、申請額が予算の上限額に達したことを理由に受付を一旦停止した。当初の申請期限は同年12月28日に設定されており、想定より約4か月早い停止となった。 (参考:福山市ホームページ)
調査時点で、福山市および広島県の公式発表として交付件数・交付総額・移住者数といった定量的な実績データは確認できなかった。ただし、当初想定していた申請期限を大幅に前倒しして予算上限に達したという事実自体は、テレワーク移住・関係人口移住を含む移住支援金への申請需要が、少なくとも当初の予算規模を上回っていたことを示す定性的なシグナルといえる。 (参考:福山市ホームページ)
「転職を伴わない移住」を制度上の独立した選択肢にする
就業・起業に紐づく移住支援金は、地元でのマッチング求人への転職や新規起業を前提とするため、現在の職や収入を手放したくない層を対象から外してしまう。福山市のようにテレワーク移住を独立した類型として整備すれば、都市部の仕事を維持したまま地方に生活の拠点を移す層を取り込める。国の制度メニューにもともと含まれる選択肢であるため、要件定義を整えれば他の自治体でも再現しやすい。
関係人口の要件を地域固有の人手不足職種に紐づける
関係人口型の対象を「地域とのつながり」の有無だけでなく「地域が必要とする職業」との組み合わせで定義する福山市の手法は、汎用性のある考え方である。農業・伝統産業・公共交通・医療介護・保育など、自治体ごとに深刻度の異なる担い手不足分野に合わせて職種要件をカスタマイズすれば、移住支援金を単なる人口誘致策から産業・福祉政策における人材確保策へと転換できる。特定の個人や団体の属人的な運用に依存せず、要綱上の職種要件として明文化されているため、制度設計として他地域に持ち込みやすい。
予算上限による早期受付停止は、需要把握と予算設計の両面で課題を残す
2026年度分が受付開始からわずか11日で予算上限に達した事実は、テレワーク移住・関係人口移住という選択肢の拡充が実際の申請行動につながり得ることを示す一方、年度当初の予算配分と実際の需要との乖離という課題も浮き彫りにする。人気の高い移住支援策を運用する自治体にとって、年度途中の増額補正の判断や、申請時期の分散を促す広報の工夫は共通の論点になり得る。
2026年09月時点の調査内容に基づいて作成
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