初めまして、京都市環境保全創造課の松岡です！

あなたの暮らしの中にも、ふと心に残る京都の自然や生きものの風景はありませんか？

京都の暮らしには、自然や生きものが溶け込んでいます。

大学進学を機に京都に居住するようになって早20余年、私の思い出にはいつも、自然や生きものが寄り添っています。

例えば、お弁当をもって出かけた鴨川の河川敷。

例えば、カエルの鳴き声が大きく響いて季節の移ろいを感じた夜。

例えば、子どもとドングリを拾って帰った散歩道。

正直に言えばあまり意識していませんでしたが、改めて振り返ると、私の思い出の中には京都の自然や生きものがあったんだなと気付きます。

私たちは、自然や生きものからたくさんの恵みを受けています。

毎日食べているお米や野菜、家に使われる木材、服に使われる綿や麻など、農林水産業を通じて、森里川海の生態系から得られる恵みです。

自然や生きものからの恵みが、この先ずっと当たり前にあれば良いのですが、そうではありません。

チマキザサやフタバアオイなど「京都らしさ」を支えている生物資源の減少、適度な手入れが入らなくなったことによる森林の荒廃、気候変動による影響の顕在化など、生物多様性の危機はどんどん進行しています。例えば、森林の荒廃によって、動物の食糧不足が生じてしまい、空腹のクマが人里に出現してしまう、ということも考えられます。

私たち京都市では、このような危機を踏まえ、将来にわたり生物多様性の恵みを確保し、享受していくため、生物多様性地域戦略「京都市生物多様性プラン（2021-2030）」を2021年３月に策定し、生物多様性の保全と持続可能な利用の取組を推進しています。

このプランに基づいて、京都らしさを支える生きものの保全・再生などに取り組む団体等を認定する制度の拡充など、各主体の行動を促す施策を推進するとともに、チマキザサの再生や東山の森づくり、宝が池の森の保全・再生など、モデル地域における生物多様性の保全活動を推進してきました。

また、生物多様性の保全活動などをコーディネートする「きょうと生物多様性センター」の設置、生物多様性の保全に取り組みたい企業と保全団体とのマッチングを図る「きょうと生物多様性パートナーシップ協定制度」の創設など、活動を支援する体制の整備・充実に取り組んできたところです。

（　詳しい取組内容は、こちらに掲載しています　→　

こうした取組の成果もあり、「積極的に活動されている方々」の後押しが進み、プランの目標である「自然共生社会」の実現に向けて、着実に歩みを進めることができています。

しかしながら、プランの策定からもうすぐ５年になる今、以下のような課題が見えてきています。

●　興味のある人の認知が進んでいる一方で、自然や生きものに興味がある層に偏っており、学生や観光客をはじめとした幅広い方々に浸透するまでには至っていない

●　「積極的に活動されている方々」を支援する体制を強化してきたが、あらゆる方々が行動する状態には至っていない

市民1,000名を対象としたアンケートでは、約７割の方が「自然を身近に感じる機会がある」と回答された一方で、暮らしの中での配慮や自然との触れ合いなど「生物多様性を守るために取り組んでいる」と回答された方は約５割にとどまりました（※）。

両者に乖離があるだけでなく、アンケートを年毎に見てみると、「生物多様性を守るために取り組んでいる」と回答された方は、減少傾向にありました。

※　出典：令和６年度京都市環境基本計画市民アンケート調査

ここからは、この想いをどんな形にしていくのかをお話ししたいと思います。

冒頭で触れたように、私たちの暮らしは自然や生きものと深く関わっています（と言いつつ、書いている私も知らないことがたくさんあります）。

しかし、自然や生きもの、生物多様性というと、自分には関係ないかな…、なんて印象を持つかもしれません。

けれど実は、どんな人の暮らしの中にも、自然や生きものとのつながりが隠れています。

和食も、生け花も、茶道も、お祭も、旅行も、京町家も、庭園も、農林業も、たくさんのことが自然や生きものと深く関わっています。

列挙した中に皆さんが好きな分野はありますか？

文化や暮らしとつながっている自然や生きもの、このつながりが分かれば、日常に対する見方も変わり、新たな気づきや発見があるかもしれません。

文化や暮らしを起点にして、自然や生きものとのつながりを見える化し、京都の自然を身近に感じ、愛着を深める人を増やすための新たな仕掛けをつくることで、学生や観光客をはじめとした幅広い方々への認知促進や行動するきっかけを創出し、生物多様性に関する活動の裾野を拡大していきます。

「生きものむすぶ・みんなのミュージアム事業」

見える化したものは、皆さんに一方的に見ていただくだけではありません。

見える化した情報を活用して、共通の興味や課題を持つ方々同士で交流いただく場もつくります。

好きな人から好きな人へ、好きな人からこれから好きになる人へ、たくさんの京都愛が伝わっていくような場を設けます！

ちなみに、本事業では、「ミュージアム」と銘打っていますが、いわゆる“博物館”をつくる事業ではありません。

京都全体を「生きたミュージアム」に見立て、市内外の様々な方が参加して（キュレーターとなり）、京都の文化や暮らしとつながっている自然や生きものの情報を収集・整理し、また交流することで、「本物」を見出すこと、それがこの事業のコンセプトなのです。

生きものむすぶ・みんなのミュージアム事業のイメージ

皆さんと一緒につくりあげたい

と、ここまで熱い思いを語ってきたところですが、令和７年度はミュージアムの内容を詳細に検討し、令和８年度以降に本格的に構築していくこととしています。

そうです、今は内容を詳細に検討する段階です。

本事業では、自然や生きものにあまり興味のない方から生物多様性の保全に取り組む活動者まで、様々な方々が魅力を感じ、参加し、交じり合えるような仕掛けにしたい！

そのため、検討段階から、たくさんの方々の意見を聞き、対話し、検討していきたいと考えています。

京都の文化や暮らしを彩ってきた生物多様性の恩恵を共に未来に引き継ぐために、一緒に取り組んでいきませんか？

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記事

生きものむすぶ・みんなのミュージアム事業とは

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京都市

生きものむすぶ・みんなのミュージアムとは？

京都には、人と自然が共に生きるという「いのちの知恵」が息づいています。

生きものむすぶ・みんなのミュージアム

は、その知恵を未来へとつなぐため、まちを“生きたミュージアム”に見立て、子どもから大人まで、共に育んでいく市民参加型プロジェクトです。

ここでは、文化・風景・食・祭・生きものなど、京都に息づくあらゆる「いのち」が展示対象であり、市民一人ひとりがそのキュレーター（※）になれます。

一人ひとりの実践や視点が結ばれることで、京都という都市そのものが博物館や図書館のように、いのちをむすぶ新しい文化のかたちを世界へと橋渡しする。

それが、「生きものむすぶ・みんなのミュージアム」です。

（※）キュレーション：情報を収集・選定・編集し、テーマや目的に沿って新しい価値等を提示すること。