
そがまちジェフいろプロジェクト
千葉市が「Let's enjoyそが」から生まれた発案として、JR蘇我駅からフクダ電子アリーナまでの沿道施設をジェフユナイテッド市原・千葉のカラーで彩る取り組み。2016年度から人工芝設置やラッピングを年度ごとに積み重ね、10年以上継続している。
千葉市中央区蘇我地区では、JR蘇我駅からジェフユナイテッド市原・千葉のホームスタジアムであるフクダ電子アリーナまでの沿道にある道路・都市施設を、クラブカラーで彩る「そがまちジェフいろプロジェクト」が2016年度から継続的に進められている。歩道の植樹ますへの人工芝設置、自由通路や附帯施設のラッピング、路面標示シートの設置などを年度ごとに積み重ね、単発の装飾で終わらせず10年以上にわたって対象範囲を広げてきた点が特徴である。 (参考:千葉市:そがまちジェフいろプロジェクト)
実施主体は千葉市都市局都市部まちづくり課と建設局土木部土木保全課で、地域住民・商店会・大学・企業・JR東日本・ジェフユナイテッドが参加する協議体「Let's enjoyそが」(旧「ホームタウンを話し合う会」)での議論から生まれた発案を、行政のインフラ整備として実装した事例である。開始年度の2016年10月には、歩道のボラードへの反射シール貼付やクラブカラーロープの設置を市民協働で行うイベントも実施された。 (参考:千葉市:そがまちジェフいろプロジェクト、千葉市:Let's enjoy そが)
蘇我地区は、かつてJFEスチール(旧川崎製鉄)の工場用地が広がる臨海工業地帯であった。2005年の商業施設「ハーバーシティ蘇我」開業や、隣接する蘇我スポーツ公園へのフクダ電子アリーナ整備を経て、千葉市は同エリアを「蘇我副都心」と位置づけ、「住む人も訪れる人もうるおいと活気に満ちたスポーツ・文化の薫る街」という目標像を掲げてまちづくりを進めてきた。 (参考:千葉市:JR蘇我駅周辺のまちづくり)
フクダ電子アリーナが立地する一方で、最寄り駅であるJR蘇我駅からスタジアムまでの沿道は、住宅・商業・工業施設が混在する通過動線に過ぎず、ホームゲーム開催日以外は「ジェフのホームタウン」としての一体感が景観として感じられにくい状態にあった。駅とスタジアムを結ぶ導線そのものをどう地域資源として活用するかが課題となっていた。 (参考:千葉市:JR蘇我駅周辺のまちづくり)
千葉市とジェフユナイテッド、地域住民は2012年2月に「ホームタウンを話し合う会」を発足させ、町会・商店会代表者、淑徳大学、JR東日本、JFEスチールなどが参加する場で、地域とクラブの結びつきを強める方策を協議してきた。同会は2015年4月に「Let's enjoyそが」へ改称し、2カ月ごとに進捗報告と協議を行う体制で活動を継続している。そがまちジェフいろプロジェクトは、この協議の場から生まれたアイデアの一つであり、「ジェフを身近に感じることができるようにするとともに、ジェフ及び千葉市へより愛着を持っていただきたい」という狙いのもと、2016年度から千葉市が実施主体として整備を進めることになった。 (参考:千葉市:Let's enjoy そが、千葉市:そがまちジェフいろプロジェクト)
初年度の2016年度(平成28年度)には、エレベーター建屋やバスシェルター屋根へのラッピング、マスコットキャラクターの路面標示シート設置など、点在する施設への装飾を先行して実施した。同年10月8日には、歩道のボラード(車止め)間にクラブカラーの三色ロープ(赤・黄・緑)を張り、各ボラードにチームエンブレムシールを貼付ける作業を市民協働イベントとして行った。定員200人程度の募集に対し、応募多数の場合は抽選とする旨が示された上で、約200人の市民が参加し、参加者にはジェフユナイテッドのグッズ(クリアファイルなど)が贈られた。 (参考:千葉市:そがまちジェフいろプロジェクト、千葉市:ジェフカラー化イベント(そがまちジェフいろ市民協働))
初年度以降も整備は単年度で終わらず、対象範囲を広げながら継続された。2018年度(平成30年度)には蘇我駅東口自由通路の階段蹴上に巨大なマスコットキャラクターをラッピングし、2019年度(令和元年度)には路面標示シートを追加設置した。2020年度(令和2年度)には自由通路の階段袖にラッピングを追加し、2021年度(令和3年度)には自由通路の桁にクラブスローガン「WIN BY ALL!」の文字をラッピングするなど、駅の自由通路まわりの装飾が段階的に積み上がった。 (参考:千葉市:そがまちジェフいろプロジェクト)
2022年度(令和4年度)には、蘇我駅から国道357号線までの沿道にある歩道の植樹ますに、クラブカラーをイメージした人工芝を設置し、点在するラッピングやシートに加えて足元の景観にもクラブカラーを取り入れた。2023年度(令和5年度)には劣化した路面標示シートの貼り替えを行い、2024年度(令和6年度)にも植樹ますへの人工芝整備を継続するなど、開始から10年近くを経た現在も維持・更新が続いている。 (参考:千葉市:そがまちジェフいろプロジェクト)
そがまちジェフいろプロジェクトは単発の企画ではなく、2012年発足の協議体「Let's enjoyそが」から生まれた提案である点が特徴的である。同協議体は、ホームゲーム開催日に沿道へ約2,000本の黄色いかざぐるまを掲出する「かざぐるまプロジェクト」やスタンプラリーなど複数の施策を並行して展開しており、ジェフいろプロジェクトはその中でも恒久的な都市・道路施設の整備を担う施策として位置づけられている。 (参考:千葉市:かざぐるまプロジェクト)
多くのホームタウン装飾がのぼりやフラッグなど試合開催日限定の一時的な演出にとどまる中、本事例は歩道の植樹ます、エレベーター建屋、バスシェルター、自由通路の階段や桁といった恒久的な都市・道路施設そのものをラッピングや人工芝で改修する点が異なる。2016年度の初期整備以降、ほぼ毎年度、対象施設や範囲を広げる形で整備が続けられており、単年度で完結するイベントではなく複数年度にわたる継続事業として運用されている。 (参考:千葉市:そがまちジェフいろプロジェクト)
沿道の装飾と並行して、蘇我駅周辺整備事業では自由通路の耐震補強・改修にあわせて支柱を緑色、高欄を黄色に塗り分けるなど、クラブカラーを意識した仕様変更が行われた。西口駅前広場の拡張やバスシェルター・公衆トイレの新設といった通常のインフラ整備事業とデザインテーマを共有させることで、装飾の上乗せにとどまらず、まちの基盤整備そのものにクラブカラーを組み込んでいる。 (参考:千葉市:蘇我駅周辺整備事業)
10年以上にわたる継続整備により、JR蘇我駅からフクダ電子アリーナまでの沿道は、歩道の人工芝、ボラードの反射シール、自由通路のラッピングや路面標示シートなど、複数の地点でクラブカラーが視認できる状態になっている。単発の装飾ではなく複数年度の積み重ねによって、沿道景観全体としての統一感が形成された点が確認できる。 (参考:千葉市:そがまちジェフいろプロジェクト)
2016年10月8日の市民協働イベントでは、定員200人程度の募集に対して約200人の市民が参加した。地域住民のクラブへの関心・愛着の高さがうかがえる結果であり、以降の年度整備が行政主体で継続される土台になったと考えられる。 (参考:千葉市:ジェフカラー化イベント(そがまちジェフいろ市民協働))
本プロジェクトとは別の主体による取り組みだが、2026年8月4日、ジェフユナイテッド市原・千葉と東日本旅客鉄道株式会社房総事業本部の連携により、JR蘇我駅のホーム駅名標6箇所に「蘇我(ジェフユナイテッドステーション)」の表記が追加され、西口駅名標についても、クラブカラーを前面に打ち出した装いへと一新された。JR東日本管内でプロスポーツチーム名が駅の副称として採用されたのは初めての事例であり、期間の定めのない措置とされている。そがまちジェフいろプロジェクトが2016年度から沿道施設を段階的にジェフカラー化してきた土壌の上に、駅そのものの名称表示にまでクラブとの結びつきが波及した形であり、蘇我エリア一帯でクラブカラーを軸にした地域アイデンティティ形成が重層的に進んでいることを示す動きといえる。 (参考:JR蘇我駅ホーム駅名標への「ジェフユナイテッドステーション」の名称追加について|ジェフユナイテッド市原・千葉、J1千葉、本拠地最寄り駅が待望の「ジェフユナイテッドステーション」に|Yahoo!ニュース(スポーツ報知))
一時的な装飾は予算・労力に対して効果が試合当日に限定されがちである。本事例は、耐用年数の長い道路・都市施設(植樹ます、自由通路、バスシェルター等)の更新タイミングにクラブカラーというデザインテーマを重ねることで、通常の維持管理の枠内で継続的な景観形成を実現している。プロスポーツクラブがなくても、地域の象徴(伝統産業の色、キャラクター、シンボルカラー等)を通常のインフラ更新に組み込む発想は他地域にも転用可能である。
かざぐるまプロジェクトやスタンプラリーなど複数施策を並行運営する「Let's enjoyそが」のような、住民・企業・行政・関係団体が定期的に集まる協議体の存在が、単発のアイデアを年度をまたいだ継続事業に育てる基盤になっている。一過性のイベントを企画してから協力先を探すのではなく、母体となる協議の場を先に設けたうえでそこから施策を発案・運営するという順序は、スポーツ以外のテーマ(伝統行事、産業振興等)でのホームタウン型まちづくりにも応用できる。
2016年の市民協働イベントで参加希望が定員を上回ったという事実は、地域の潜在的な参加意欲を測る具体的な指標になった。初回イベントの応募動向を、単発で終わらせるか複数年度の継続事業として設計し直すかを判断する材料として活用する視点は、他地域の協働イベント設計にも参考になる。
2026年08月時点の調査内容に基づいて作成
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