ゆ
ゆきまつ
1/31/2025, 12:41:17 AM
【教えてください!】杉並区のどこでどんなグリーンインフラをしてみたいか
皆さんの投稿を拝読し、自分なりにGIグリーンインフラの位置付けを考えました。この一年で学んだことを整理するうち、水の循環という視点が大切なのではないか、その中でGIとは雨水を(下水と分けて)利用する可能性だと思い至りました。長文で申し訳ありません。間違いがあるかもしれませんがお許し下さい。
<治水から考える>
①二種類のグレーインフラ「調節池」の治水効果について
「調節池」と呼ばれているものには大きく二つのタイプがあると思います。一つはシールド工法によって地下に巨大トンネルを掘るもの(東京都が善福寺川で実施予定の工事)。もう一つは、規模は小さくなりますがグラウンドの下などに作るタイプのものです。前者シールド工事の工期は17年(おそらくそれ以上)かかります。後者タイプは数年で完成します。迅速な治水効果がどちらにあるかは明らかです。私は、シールド工事は各地で事故が発生しているので、住宅地で行うには問題がある工法だと考えています。後者タイプの調節池を数カ所つくれば確実に治水効果は得られると思います。
②社会インフラとしての合流式下水道と都市河川について
江戸時代、糞尿は田畑の肥やしとして利用され、生活排水はできるだけ最後まで使い切り、出さない工夫がされていました。戦後市街地化が進み、私たちが出した生活排水(下水)は降雨時に雨水と共に「合流式下水道」で都市河川に流されます。河川改修工事によって川は用水路のようになりました。
③水害の現状と要因について
近年杉並区で起こっている洪水被害は、下水道管に下水+雨水が流れず、マンホールなどから溢れる「内水氾濫」によるものです。川から水が溢れる「外水氾濫」とは区別して考えなくてはいけません。
私は自分が出す生活排水がどこを流れて処理されているかこれまで関心がありませんでした。しかし私が流した下水が更に下流の地域の水害の要因になると知りました。
あまり知られていないことですが、善福寺川上流の原寺分橋付近で、流域上流の武蔵野市の下水+雨水が流入しています。戦後間もない時期に武蔵野市と杉並区の間で取り決めが行われ、河川の少ない武蔵野市の下水を杉並区が引き受け入れることになったのです。それ以降現在まで両市区の市街地化は進み、川に流入する水量は増大しました。杉並区内の流入水量も増えましたが、武蔵野市からの流入水量については把握されていないのが実情です。
<生態系や環境から考える>
①土中の水の流れと生態系について
降った雨が地中に染み込み、毛細管現象により行き戻りして浄化された水が川底から湧き出して川ができます。土中に水を蓄えるのは植物の根と微生物の働きによります。高木は土中の水を吸い上げ蒸散し周囲を穏やかな環境に保ちます。こうした環境がたくさんの生き物を育てます。この10年で善福寺川緑地ではオオタカ、アオバズク、ツミといった猛禽類が暮らす生態系が完成しました。子供達も公園の高木の下で遊んでいます。人間が過信してはいけないのは、地下の水の流れは完全には分からないということです。
⑤川のいのちについて
杉並区主催の「水鳥の棲む水辺」シンポジウムに参加し子供達の素晴らしい発表を聞きました。彼らは善福寺川を生き物が息づく川に生き返らせたいと願っています。私も子供の頃に湧水の小川で遊んだ経験があるので共感します。GIグリーンインフラによって川に流入する下水が減り、湧水が増えれば、川の生態系が回復します。発表者のほぼ全員が口にしていたのは「分流式(下水と雨水を分けた)下水道になれば川は生き返るのに」という思いでした。
私の中にある懸念は、リニアのシールドマシン工事で山梨県や岐阜県の田んぼや井戸の水が枯れたことです。善福寺川上流域調節池工事では、川の数少ない湧水地点の地下をシールドマシンで掘削します。善福寺川の湧水が枯れて自浄できなくなれば、ヘドロの溜まった臭い用水路となります。
<GIグリーンインフラは全ての問題をつなぐ>
①GIグリーンインフラ世界の事例
私たちの国では2021年流域治水関連法が成立し、ようやくGIグリーンインフラの概念が導入されましたが、海外ではすでに30年前から取り組みが始まっています。ニューヨークやGIグリーンインフラ先進国シンガポール、ドイツなどの事例を多くの皆さんと共有できることを願います。
②GIグリーンインフラの治水効果
GIグリーンインフラは、グレーインフラの貯水量を全て担うことを目指しているのではなく、川への雨水の流入にタイムラグを生じさせることが目的だと理解しています。氾濫とは水が一気に増水して下水道管や河川に収まりきらず溢れる現象です。少量ずつでも多くの地点で土中やタンクに一旦雨水を溜め込むことができれば、その後溢れても時間差が生じて氾濫を防ぐことができると考えます。緑地の多くが民地である杉並区でこれを実現するためには、沢山の区民の協力が不可欠です。
数値については、島谷先生の研究室で出された計算(GIグリーンインフラが広がればグレーインフラは必要なくなるかもしれない?!)を全体目標として示していただきたいと思います。また事例ごとに個別の目標数値を提示し、実施された地点の効果を検証し「見える化」していただきたいと思います。
②GIグリーンインフラが作る環境(生物多様性)
土中に雨水が染み込み湧水が湧くと、川と地域の生態系が改善します。それは子供達の教育と遊びの場となり、大人達の憩いの場となります。人と自然がつながる杉並区はすべてての世代に愛されると思います。
<地下水エネルギーの利用>
地下調節池に蓄えた大量の雨水を処理し再利用することを考えます。水としてプールなどへの利用もありますが、地下水が15度程度に保たれることを利用して外気との温度差により空調(冷暖房)に使う技術があるそうです。例えば学校の建て替え等でグラウンド地下に水を蓄えプールや施設の空調に利用するなどのプランが考えられます。
<行政の総合的なコーディネートと市民の参画>
気候変動対策・河川の流域治水・下水道・緑化・生物多様性、これまでバラバラに進められていた事業を効果的で正しい方向に導くには、広域な視点と連携が必要です。杉並区と東京都と国には、「水の循環」という視点から包括的にコーディネートしていただきたいと願います。
市民は下水・治水のことは行政にお任せでしたが、暮らしの質を高めるためにも、水の循環の意識を生活に取り入れる必要があると思います。
何十年も放置されてきた杉並区と武蔵野市の間の善福寺川問題。東京都・杉並区・武蔵野市・住民・専門家による対話の場を作り、豊かに生きるためのより良い解決策に向けた取り組みを始めるときだと思います。杉並区が一連の問題を捉え、いち早くGIグリーンインフラに取り組む姿勢を見せてくださったことに感謝いたします。区民の間に問題意識が広がっています。