
LEADS TO THE OCEAN-海につづくプロジェクト(千葉ロッテマリーンズ)
千葉ロッテマリーンズが2018年にプロ野球球団として初めて参加した海洋ごみ削減プログラム「LEADS TO THE OCEAN」。ZOZOマリンスタジアム周辺と幕張の浜で試合前後にファンとごみ拾いを実施し、8年以上継続してきた仕組みと実績を整理する。
「LEADS TO THE OCEAN-海につづくプロジェクト-」(LTO)は、日本財団とNPO法人海さくらが2015年に湘南ベルマーレとともに始めた、プロスポーツチームと連携した海洋ごみ削減の取り組みである。千葉ロッテマリーンズは2018年5月、プロ野球球団として初めてこのプロジェクトに参加し、本拠地ZOZOマリンスタジアムのある千葉市美浜区の幕張の浜周辺で、試合前後にファンとともにごみ拾いを行う活動を続けている。 (参考:海につづくプロジェクト公式サイト、千葉ロッテマリーンズ|BLUE SHIP)
2026年8月時点で活動開始から8年以上が経過している。BLUE SHIPが公表する活動実績(集計期間は公式には明示されていない)によれば、開催回数は77回、回収したごみ袋は581袋に達している。参加者にはスタンプカードが配布され、一定回数参加したファンは「ゴミ拾いマスター」として表彰される仕組みがあり、球団の集客力とファンの自発的なマナー意識を土台にした、スポーツ球団・NPO・公益財団による連携モデルとして位置づけられる。 (参考:千葉ロッテマリーンズ|BLUE SHIP)
LTOを主催するNPO法人海さくらと日本財団は、「海のゴミの約8割は、川・街からやってくる」という認識を活動の出発点に据えている。海岸や海上でのごみ回収だけでなく、発生源に近い市街地でのごみ拾いを増やすことが、結果的に海洋ごみの抑制につながるという考え方である。 (参考:海につづくプロジェクト公式サイト)
千葉市が2021年11月〜12月に実施したマイクロプラスチック実態調査では、幕張の浜を含む市内の砂浜すべてでマイクロプラスチックが検出され、濃度は1平方メートルあたり47個から2059個に達した。海水中でも検出されており、市はごみを放置せず決められた方法で正しく処分するよう住民に呼びかけている。ZOZOマリンスタジアムが面する幕張の浜も、こうした海洋ごみ問題と無縁ではない立地にある。 (参考:千葉市:マイクロプラスチック実態調査を行いました)
1992年の本拠地移転以来、千葉ロッテマリーンズの本拠地ZOZOマリンスタジアムは幕張の浜に面する立地にある。球団はこの立地を踏まえ「海とは非常に縁の深い関係にある」と説明しており、地域とのつながりや社会貢献を目的にLTOへの参加を決めたとしている。参加の背景として、マリーンズファンの間ですでに「試合後にごみ拾いを行う」というマナーが浸透していたことも挙げられており、新たに意識を醸成するというより、既存の行動を公式な活動として制度化した点が出発点になっている。 (参考:千葉ロッテマリーンズ|BLUE SHIP)
LTOは2015年7月、湘南・江の島でビーチクリーン活動を続けてきたNPO法人海さくらと日本財団が、Jリーグの湘南ベルマーレと共催するかたちで始まった。以後、複数のJ1クラブやバスケットボールチームが順次参加し、2018年5月に千葉ロッテマリーンズがプロ野球球団として初めて加わった。 (参考:LEADS TO THE OCEAN|海と日本PROJECT【日本財団】)
マリーンズは2018年5月3日に初回の清掃活動を実施した。主催試合の前後、約20〜30分間にわたりZOZOマリンスタジアム周辺と幕張の浜でごみ拾いを行う形式で、トングとごみ袋は球団側が用意し、事前予約なしに参加できる。パ・リーグ.comの報道によれば、2018年シーズンは9月下旬までに全16回の開催が予定されていた。 (参考:走力だけでなく“掃力”も絶賛向上中!|パ・リーグ.com)
参加者にはスタンプカードが配布され、一定回数の参加でスタンプが貯まると「ゴミ拾いマスター」に認定され、記念品が贈られる。2023年シーズンからは、活動の告知・実績公開の窓口が球団専用サイトから、海さくらが運営するごみ拾い・環境活動ポータル「BLUE SHIP」に一本化された。 (参考:走力だけでなく“掃力”も絶賛向上中!|パ・リーグ.com、ご注意|千葉ロッテマリーンズ|海につづくプロジェクト)
周辺清掃という事後対応に加え、マリーンズは2024年シーズンからZOZOマリンスタジアムのコンコースにIoT型のごみ圧縮ボックス「SmaGO」を導入した。満杯になる前にごみを自動圧縮し、通常の約5倍の容量を溜められる設備で、球場内で発生するごみの回収効率化と美観維持を図るとともに、将来的には飲食容器の資源化にもつなげる方針が示されている。 (参考:千葉ロッテマリーンズ!2024シーズンよりIoTスマートゴミ箱「SmaGO」を設置|ConnectX)
多くの環境啓発活動が来場者の意識を新たに喚起することから始めるのに対し、マリーンズの取り組みは「試合後にファンが自主的にごみ拾いをする」というすでにあった行動を球団公式の活動として制度化し、スタンプカードや表彰という形で可視化した点に特徴がある。ゼロから習慣をつくるよりも、既存の行動をすくい上げて仕組み化する方が、少ない労力で参加率を確保しやすいと考えられる。 (参考:千葉ロッテマリーンズ|BLUE SHIP)
マリーンズは独自の環境プログラムをゼロから構築するのではなく、日本財団とNPO法人海さくらが運営するLTOという全国共通の枠組みに参加している。LTOにはサッカー・バスケットボールなど計32チームが名を連ねており、道具の提供やスタンプ制度、ブランディングといった運営ノウハウを個々のチームが個別に持ち寄る必要がない。プロジェクト全体では2025年に参加人数20,335人、ゴミ拾いマスター認定者869人という規模に達しており、マリーンズはプロ野球界で唯一の参加チームであり、2018年から8年以上にわたり参加を継続している。 (参考:海につづくプロジェクト公式サイト)
周辺の清掃活動(発生後の回収)と、2024年から導入したSmaGO(発生源での効率的な回収・美観維持)を組み合わせている点も特徴である。ファンによるスタジアム外の行動(周辺のごみ拾い)と、球団自身によるスタジアム内部での設備投資を組み合わせることで、単発のボランティア活動にとどまらない継続的な仕組みづくりを図っている。 (参考:千葉ロッテマリーンズ!2024シーズンよりIoTスマートゴミ箱「SmaGO」を設置|ConnectX)
2018年5月の開始から2026年8月時点で8年以上が経過している。BLUE SHIPが公表する活動実績では開催回数は77回、1回あたりの平均参加者は25名、回収したごみ袋は581袋とされているが、この数値が2018年開始から通算のものか、2023年のBLUE SHIP移行以降の集計かは公開情報からは確認できない(活動履歴アーカイブでは2022年9月時点ですでに通算90回超の開催が記録されており、両者の数値には整合しない部分がある)。プロ野球球団として初めて参加した企画が一過性のイベントで終わらず、長期にわたり継続してきたこと自体が、まず確認できる成果である。 (参考:千葉ロッテマリーンズ|BLUE SHIP)
一方で、開催頻度は活動当初から大きく変化している。2018年シーズンは年間16回の開催が計画されていたのに対し、直近1年間の開催実績は2回にとどまっている。ただし直近の開催では平均67名が参加しており、これは累計平均の25名を上回る水準である。開催回数を絞り込む一方で1回あたりの参加規模は拡大している可能性がうかがえるが、公開情報からは開催頻度が減少した具体的な理由までは確認できなかった。 (参考:千葉ロッテマリーンズ|BLUE SHIP、走力だけでなく“掃力”も絶賛向上中!|パ・リーグ.com)
公開されている実績は、開催回数・参加人数・回収袋数といった活動量に関する指標にとどまり、幕張の浜周辺の海洋ごみやマイクロプラスチックが実際に減少したことを示す定量データは確認できなかった。千葉市が実施したマイクロプラスチック調査も、マリーンズの活動と直接紐づけて効果を検証したものではなく、この活動が海洋環境そのものに与えた影響を評価するには、別途のモニタリングが必要と考えられる。 (参考:千葉市:マイクロプラスチック実態調査を行いました)
スポーツ施設やイベント会場では、来場者が自然に行っているマナーの良い行動(ごみを持ち帰る、周辺を清掃するなど)がすでに存在している場合がある。こうした行動をゼロから作り出すのではなく、スタンプカードや表彰制度といった形で可視化・制度化することで、追加の啓発コストを抑えながら参加率を高められる可能性がある。マリーンズの事例は、特定の地域や球団に固有の手法ではなく、来場者を持つ他の施設や団体にも応用しやすい設計といえる。 (参考:千葉ロッテマリーンズ|BLUE SHIP)
環境活動を各団体が個別にゼロから設計するのではなく、日本財団やNPOが提供する全国共通のプラットフォームに参加することで、道具の調達やブランディング、実績の可視化といった運営負担を分散できる。同種の仕組みは環境分野に限らず、公民連携で地域活動を立ち上げる際の一般的な選択肢として参考になる。 (参考:海につづくプロジェクト公式サイト)
周辺清掃という事後対応だけでなく、スタジアム内のごみ排出そのものを減らす設備投資(SmaGOの導入)を組み合わせている点は、清掃ボランティアだけに依存しない持続的な仕組みづくりの一例である。地域の美化活動を検討する他地域の主体にとっても、「拾う」活動と「出さない」対策を両輪で設計する視点は参考になる。 (参考:千葉ロッテマリーンズ!2024シーズンよりIoTスマートゴミ箱「SmaGO」を設置|ConnectX)
8年以上活動を継続してきた一方で、開催頻度は当初計画から大きく縮小している。息の長い取り組みほど立ち上げ当初の勢いをそのまま維持するのは難しく、運営体制や参加者インセンティブの設計を定期的に見直す必要があることを、この事例の頻度変化は示唆している。 (参考:千葉ロッテマリーンズ|BLUE SHIP)
2026年8月時点の調査内容に基づいて作成
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