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千葉市と保育士養成大学・短期大学との相互連携協定
千葉市と保育士養成大学・短期大学との相互連携協定

千葉市と保育士養成大学・短期大学との相互連携協定

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千葉市は2025年12月に敬愛短期大学と単独で、2026年5月には植草学園大学・淑徳大学など4機関を加えた5機関で相互連携協定を締結。市内の保育士養成大学・短大がほぼ全て参画し、保育人材の育成・確保と質向上に取り組む枠組みが整った。

概要

千葉市は2025年12月、市内に立地する敬愛短期大学と保育人材の育成・確保に関する相互連携協定を単独で締結した。約5カ月後の2026年5月には、植草学園大学・淑徳大学・千葉経済大学短期大学部・千葉明徳短期大学の4機関を加えた計5つの大学・短期大学との協定へと枠組みを拡大し、市内で保育士養成を担う高等教育機関がほぼ一体となって千葉市と連携する体制が構築された。(参考:千葉市記者発表資料(2025年12月17日)千葉市記者発表資料(2026年5月7日)

協定の連携事項は、(1)保育人材の育成・確保、(2)保育の質向上、(3)子育てをきっかけとした地域社会とのつながりという3点に整理されており、国が掲げる「こどもまんなか社会」の実現への貢献が共通の理念として掲げられている。特徴的なのは、いきなり複数機関で協定を締結したのではなく、敬愛短期大学単独での実証プロジェクトを2025年度に先行実施し、その内容を協定として具体化したうえで、さらに他機関を巻き込んで拡大していった段階的なプロセスである。(参考:千葉市記者発表資料(2025年12月17日)千葉市記者発表資料(2026年5月7日)

背景・課題

保育政策は近年、待機児童解消を目的とした「量」の拡大から、保育士の資質向上や配置の手厚さといった「質」の追求へと重心が移りつつある。千葉市では令和8(2026)年4月1日時点で、国基準に基づく待機児童はゼロとなっている一方、保育所等への入所を希望しながら入れずにいる児童は673人にのぼり、保育に対するニーズ自体は今後も高い水準が続くとみられている。(参考:千葉市の保育所入所待機児童数

千葉市はこれまでも、新卒保育士への給与上乗せや家賃補助、修学資金の貸付といった経済的インセンティブを中心とした「保育士さん応援宣言」を展開してきた。こうした処遇改善策は人材の確保に直接効くが、保育士の資質向上や、養成段階からの人材の裾野拡大までを単独でカバーするものではない。(参考:千葉市の未来を育てよう!保育士さん応援宣言!

直接の契機となったのは、市内の保育士養成校の一つである敬愛短期大学が2024年4月、キャンパスを佐倉市から千葉市稲毛区に移したことだった。同大学は保育士養成に長年携わる一方で地域と関わる活動にも力を入れてきた機関であり、移転で市との距離が物理的に縮まったことをきっかけに、千葉市との連携協議が始まった。(参考:千葉市記者発表資料(2025年12月17日)

取り組みのプロセス

1. 実証プロジェクトの先行実施(2025年度)

敬愛短期大学は、正式協定に先立ち、今後の連携内容を固めるための実証プロジェクトを大学側から提案し、千葉市と共に試験的に実施した。内容は4つに整理される。まず、計6回実施した授業にはのべ346人の学生が参加し、座学で学んだ理論をもとに公立保育所で子どもと触れ合う現場実習を行った。次に、市の職員が公立保育所の仕事内容や採用試験について説明する就職説明会を開き、同大学卒業生の保育士と在学生との意見交換の場も設けた。さらに、同大学教員が3つの公立保育所に赴き、多様な子どもを包摂する保育や異なる年齢の子ども同士の活動を題材にした研修を行い、大学側の専門性を現場の保育士に還元した。最後に、大学が地域の親子を対象に開いたイベントについて、市内50カ所の公立保育所・認定こども園にチラシ掲示を依頼する形で広報に協力した。(参考:千葉市記者発表資料(2025年12月17日)

2. 敬愛短期大学との単独協定締結(2025年12月24日)

実証プロジェクトの結果を踏まえ、千葉市と敬愛短期大学は2025年12月24日、市役所高層棟の市長応接室で相互連携協定を締結した。締結式には学校法人千葉敬愛学園の三幣利夫理事長と神谷俊一千葉市長が出席し、協定書に署名した。連携事項は、(1)保育人材の育成・確保、(2)専門性を生かした保育の質の向上と課題解決、(3)子育てをきっかけとした地域とのつながり、(4)その他必要事項の4項目に整理され、実証プロジェクトで確認された取り組みを継続・発展させていくことが確認された。(参考:千葉市記者発表資料(2025年12月17日)

3. 2大学3短大を加えた5機関体制への拡大(2026年5月14日)

約5カ月後の2026年5月14日、千葉市は敬愛短期大学に加え、植草学園大学・淑徳大学・千葉経済大学短期大学部・千葉明徳短期大学の4機関を新たに迎え、「保育の未来を共につくる相互連携に関する協定」を締結した。締結式には5つの大学・短期大学の学長全員(植草学園大学・桑名俊一学長、敬愛短期大学・中山幸夫学長、淑徳大学・山口光治学長、千葉経済大学短期大学部・佐久間勝彦学長、千葉明徳短期大学・由田新学長)と神谷俊一市長が顔をそろえ、協定書に署名した。連携事項は敬愛短期大学単独協定とほぼ同じ4項目の枠組みを踏襲しており((2)項は専門性に加え知的・人的・物的資源の活用へとやや拡張されている)、今後は5機関が公立保育所での実習受け入れや職員研修、地域交流イベントなどに取り組んでいく。(参考:千葉市記者発表資料(2026年5月7日)千葉市と2大学3短大が保育人材の育成や保育の質の向上に関する連携協定を締結|植草学園大学千葉市と千葉明徳短期大学など市内3大学・2短期大学との「保育の未来を共につくる相互連携に関する協定」締結|千葉明徳短期大学

この事例の特徴

1. パイロット実施を経てから協定化・拡大するプロセス設計

多くの自治体・大学連携協定は、締結が先にあり具体的な事業内容は後から詰められることが多い。この事例では逆に、まず敬愛短期大学1校で実証プロジェクトを2025年度に走らせ、公立保育所での実習や研修、広報協力といった個別施策の実効性を確かめたうえで協定を締結し、さらにその枠組みを他の4機関に広げるという2段階のステップを踏んでいる。協定文書に記載された連携事項が抽象的なスローガンにとどまらず、実証段階の具体的な活動実績を土台にしている点は、実行可能性の観点で他地域が参考にしやすい設計といえる。(参考:千葉市記者発表資料(2025年12月17日)

2. 市内の保育士養成大学・短大をほぼ網羅する体制

千葉県が公表する「千葉県内指定保育士養成施設一覧」(令和6年4月1日時点)によれば、千葉市内に所在し千葉市の管轄に区分される保育士養成施設のうち、大学・短期大学に該当するものは、淑徳大学、植草学園大学、千葉大学(国立)、千葉明徳短期大学、植草学園短期大学(募集停止中)、千葉経済大学短期大学部、敬愛短期大学の7校である。このうち、募集を停止している植草学園短期大学と、保育士養成が主軸ではない国立の千葉大学(乳幼児教育コースの入学定員は20人)を除くと、実質的に稼働している保育士養成の大学・短大5校が今回の協定にすべて名を連ねている計算になる。5機関の入学定員を合計すると年間610人規模となり、市内の保育士養成の裾野をほぼ丸ごとカバーする枠組みが構築されたことになる。(参考:千葉県内指定保育士養成施設一覧

3. 経済的インセンティブに依らない人材確保アプローチ

千葉市は従来、給与上乗せや家賃補助、修学資金貸付などの経済的支援策「保育士さん応援宣言」を保育士確保の柱としてきた。今回の協定は、こうした処遇改善策とは異なり、大学・短大が持つ教育資源や専門知見(インクルーシブ保育の研修など)を公立保育所の現場に還元する、非金銭的なアプローチである点が特徴となっている。両者は代替関係ではなく補完関係にあり、量(採用)と質(専門性)の両面から人材確保に取り組む構図になっている。(参考:千葉市の未来を育てよう!保育士さん応援宣言!

調査時点の成果

定量的な実績として確認できるのは、2025年度に敬愛短期大学単独で実施された実証プロジェクトの段階の数値のみである。授業は計6回、参加した学生はのべ346人にのぼり、3つの公立保育所では大学教員による職員研修が行われたほか、市内50カ所の保育施設へのチラシ掲示という形の広報協力も実現した。(参考:千葉市記者発表資料(2025年12月17日)

一方、5機関体制に拡大した2026年5月14日の協定は調査時点(2026年8月)で締結から3カ月程度であり、拡大後の具体的な連携事業の実施実績や数値的な成果は、公表資料の範囲では確認できなかった。定性的な成果としては、市内の主要な保育士養成機関の学長5人と市長が一堂に会して協定書に署名したことで、機関ごとに分散していた大学・短大との連携を一本化し、市全体として保育人材育成に取り組む体制が公式に整えられた点が挙げられる。今後、実証プロジェクトで確立した授業・研修・広報協力といったメニューが他の4機関にも展開されるかどうかが、実質的な成果を判断するうえでの焦点となる。(参考:千葉市記者発表資料(2026年5月7日)

他地域への示唆

1. 単独パイロットから多機関連携へ拡大する段階設計

保育・福祉・教育分野の人材確保に取り組みたい自治体にとって、いきなり域内のすべての養成機関と一斉に協定を結ぶのではなく、まず1機関と小さく実証を始めて実効性を確かめてから拡大するプロセスは、負荷とリスクを抑えながら再現しやすい手法である。実証段階で「公立施設での実習受け入れ」「就職説明会」「職員研修」「広報協力」という粒度の細かいメニューを具体化していた点も、他自治体が自らの地域資源に応じてアレンジしやすい要素といえる。

2. 地元高等教育機関の変化を連携のきっかけにする視点

このケースでは、敬愛短期大学の全面移転という機関側の環境変化が連携のきっかけになった。移転・新設・学部改組といった高等教育機関側の動きは、地域社会との関係を結び直すタイミングとして活用できる。保育分野に限らず、看護・福祉・工学など地域に立地する養成機関全般で応用可能な視点である。

3. 自治体を介した機関間の役割分担・重複回避

複数の養成機関が同一市内に立地する場合、公立施設側から見ると、実習受け入れや研修の依頼が機関ごとにバラバラに来ることは負担になりうる。自治体が協定という形で複数機関を束ねることで、実習先の割り振りや研修テーマの分担を市側で調整しやすくなる可能性がある。ただし、この効果は5機関体制の運用実績が蓄積された段階で改めて検証する必要がある。

参照元

2026年8月時点の調査内容に基づいて作成

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